福島県教育センター所報ふくしま No.116(H07/1995.11) -006/042page
児童が学ぼうとするとき
―「国語」「算数」の学習に対する意識と行動―
学 習 指 導 部
1 はじめに
児童は,「学ぶこと」に対して.どのような意識をいだいているのだろうか。また,実際の学習場面の中で,具体的にどのように行動しているのだろうか。そして,児童の主体的に学ばうとする意欲を引き出し,豊かな学力を育成するには教師のどのような関わりが必要なのだろうか。
こういった疑問に答えるための基礎的作業とし て,昨年度以来私たちは,児童生徒の「学習に対 する意識と行動」に関する調査を行ってきた。そ の一部,昨年度の中学生を対象とする調査結果に ついては,昨年度の「所報第114号」でその分析 内容を紹介し,本県の「学力向上」に関わる課題 を明らかにしようとした。
今年度私たちは,昨年度以来の計画に基づいて, 小学校4,5,6年生を対象とする「学習に対す る意識と行動」を調査した。「学んで得た力」と しての「学力」については,「学力到達度調査」 を実施しており,その中で本県の課題を提示する 予定であるが,「学力」の問題を総体として捉え るには「学ぶこと」についての児童の心の世界へ のアプローチが不可欠であると考えたからである。
禅宗の言葉に,「同時」があると言う。これは今まさに悟ろうとする者の心と,教えようとする者の心が絶妙に呼応する機微を伝える言葉である。どんなに優れた人物が,どんなに賢い弟子に教えようとしても,呼吸が合わなければ何も教えることができない。それどころか,ただ反発を受け,本来なら持ち得たであろう基本的な信頼関係すら持ち得ない。
言うまでもなくこのことは,相手を思ういかなる情熱も.いかなる知識も技術も,言葉と心が届く状態にあって初めて意味を持つことを端的に示している。だからこそ私たちは,まず語りかけると同時に,児童の心をみつめ,児童の心の動きをとらえなければならないと思うのである。
この特集では,今回の調査の中から,「国語」と「算数」に関する学習についての調査結果を報告したい。その調査と分析によって,授業を改善していくための方法について,より具体的に考察していくことが可能になるであろう。
2 二つの視点
「国語」と「算数」の調査結果について報告す る前に,私たちが授業について考えるときに特に 重要であると考えている二つの視点について述べ たい。
(1)「問うこと」と「応えること」
一つは,思考力や判断力というものが,根本において教師と児童とのやりとりの中で鍛えられていくものであり,相互に「問い」「応える」という関係の中に「考える」ことの基盤があるという認識である。それは,「問い」「応え」ながら,思考を磨き,真理に至ろうとする哲学と教育の本質に関わるものである。
もちろん,それは断片的な「一間一答」といっ たものであってはならない。「問い」と「応え」 の中での知性と感性がぶつかりあう,緊張感に満 ちた,少し大げさな言い方になるかも知れないが <共に真理を探究するとき>なのである。
そして児童から見て,教師に「問う」ことの最 初の一歩は「質問すること」である。授業におけ
(写真は、福島市立小山小学校の様子。なお、本文と写真は直接関係ありません。)