福島県教育センター所報ふくしま No.116(H07/1995.11) -014/042page
5 考 察
ここで紹介した国語と算数に関するアンケート調査の結果は,今回実施した調査の一部にすぎないが,それぞれの教科の指導上の問題が浮き彫りにされている。
国語では,次のような問題点がある。
(1)小学校高学年になるほど,「国語か好き」と いう児童は減少する。
国語だけの問題ではないが,高学年になるほど教材の難度が高くなり,その教科を好きだという児童は減って,苦手意識を持つ児童が増える。
(2)「わかるまで頑張ろうとする」児童は,成績 別に見ると,上位児,中位児か80%を上回るのに 対し,下位児で51%程度と,大きな差がある。
このことと,「ほめられたことがない」という 児童の存在との直接的な関連は必ずしも明らかで はないが,下位児の19%以上が「ほめられたこと がない」と意識し,回答していることは留意すべ きことであろう。
(3)「物語」教材学習は児童か好きな学習の一つ であるが,発表や質問をする児童はそう多くはな く,発言しない理由として「間違えるかもしれな い」という答えが多数を占めている。
−般にわが国の児童は,発表することが苦手であると言われる。現行学習指導要領は,「表現力」を強調しているが,授業中発言しない,おとなしすぎると言われる態度は,ある意味ではわが国の文化と通底しており,なかなか改善しにくい部分であると考えられる。
しかし例えば,次のような方法は改善を図る上で有効なのではないだろうか。
☆ 多様な発言をひき出す発問 ☆
6年生の国語の教科書(光村図書・平成7年) では,物語の学習教材として,壷井栄の「石うす の歌」という短編を載せている。この作品の最初 の部分は,下のような文章である。
八月はいなかのおぼんの月です。おぼんには,お団子を作ったり,うどんを打ったりするのがいなかの習わしです。小麦やお米を粉にしたり大豆をいってきな粉をこしらえたり,それをみんな自分のうちでするのですから八月に入るとあっちのうちでもゴロゴロ,こっちのうちでもゴロゴロと,ひきうすのうたが聞こえます。
例えば,この文章について,「主人公にはどんな音が聞こえていますか?」と問えば,「ひきうすのゴロゴロという音」という答えしか返ってこない可能性がある。物語のあらすじを把握するという意味でそれを押えることは大切なことであるが,物語をより豊かに読みとるために,「『八月』という言葉から想像すると,他にどんな音が聞こえるかな?」「『うどんを打つ』音はどんな音かな?」などと発問していけば,児童は少なくとも「間違う」可能性をあまり気にしないで答えることができるであろう。もちろんその際,教師が児童一人一人の発想を大切にして答えを評価していくことが前提である。
「間違えるかも知れない」という不安は,裏返せば「自信がない」ということに繋がる。しかし「自信がついたら発表しよう」という態度では,いつまでたっても発表でさない可能性が高い。このような悪循環を打破するためにも,普段の学習訓練の積み重ねの中で,自分の考えを表現できる能力を養う工夫が望まれるであろう。また,授業の工夫としては,ディベート,ロールプレーイン