福島県教育センター所報ふくしま No.116(H07/1995.11) -027/042page
研究紹介
読解力を育てる指導の工夫
―三つの要素を持った発言を通して―
学習指導部 長期研究員 小 原 吉 雄
1 はじめに
次の詩は,「虹の足」(吉野 弘)の一部でる。
行手に榛名山が見えたころ 山路を登るバスの中で見たのだ,虹の足を。
生徒がこの部分から読みとったことを発言する場合,例えば,次のように発言するのではないだろうか。「『山路を登るバスの中で見たのだ,虹の足を。』と書いてあるので,とても感激したのだと思う。」
このような<根拠となることば>(A)をあげ ながら,自分の<考え・意見>(B)を述べてい くことは,叙述に即した読みをしていく上で,基 本となる発言の仕方である。このような発言を基 にして話し合っていけば,生徒は,この教材であ る『虹の足』の内容を叙述に即しながら互いにつ かんでいくことができる。
しかし,理解の学習では,学習している教材の内容をつかませるばかりでなく,他の文章に接した場合にも読解することができるようなカを育てていくことも必要である。
そこで,次のような実践を試みた。
2 実践にあたっての考え方とその方法
読解するときには,ことばを手がかりにして内要をとらえていく。読解力を育てていくには,手がかりとすることばの見い出し方,つまり,ことばへの着目の仕方を,より適切で多様なものへと自ら獲得させていくことが必要であると考える。
上記の発言の生徒は,「山路を登るバスの中で見たのだ,虹の足を。」を手がかりにして読み取り,「『山路を登るバスの中で見たのだ,虹の足を。』と書いてあるので,とても感激したのだと思う。」と発言した。このように,生徒は自分の持っている,ことばへの着目の仕方を基にして読み取りをして,それを発言をするのだが,この発言の内容だけでは,生徒の,ことばへの着目の仕方は明確に表されていない。ことばへの着目の仕方が明確に表されるようにするには,「なぜ,そういえるのか」という,自分の読み取りに至るまでの,ことばを基にして考えたり想像したりした過程を述べることが大切と考える。上記の発言の場合,この読み取りに至るにまでには,「普通の言い方と違った言い方をしていて(倒置法を使っていて)強調しているのがわかるし,『だ』と強く言い切っている」と考えた過程があったと考えられる。
このような「なぜ,そういえるのか」という< 根拠となることばについての説明>(C)も述ベ させれば,生徒自身に,読み取る際のことばへの 着目の仕方を振り返させることになると考える。