福島県教育センター所報ふくしま No.116(H07/1995.11) -028/042page
また,これを話し合いで検討していくことによっ て,自分が持つ,ことばへの着目の仕方をより適 切で多様なものにしていくことができると考える。
以上から,研究仮説を次のように考えた。
読み取ったことの話し合いで,生徒に次の三つの要素を持った発言をさせていけば,生徒は内容の理解を深めるとともに,ことばへの着目の仕方に気づき,読解カを育てていくことができるであろう。
- 根拠となることば (A)
- 考え・意見 (B)
- 根拠となることばについての説明(C)
三つの要素を図に示すと,下図のようになると 考える。
* ただし,「『いやがっていた』とあるから嫌いだったと 思う」など,そのまま言い換えている場合などでは,Cの部分がいらないので,その際は無理して入れないようにする。
*なお、生徒には次のように表現をかえて示す。
- A 気づいた「ことば」
- B その「ことば」からいえること,かんじられること,考えられること,想像できること
- C <なぜ,そういえるのか> 「ことば」をもとにした説明
実践に当たっての具体的な手だてとしては,次のように考えた。
(1) 手引きを作成し,その考え方,発言の仕方を示す。 (資料1P.29)
(2) 手引にしたがった書き方の例を以前に学習した教材を基に作成し提示する。
* 小学校5年で学習した「馬でかければ一阿蘇草子里−」(みずかみ かずよ)[光村図書]を使用する。 (資料2 P.29)
(3)手引きにしたがった方法で考え発言できるよ うワークシートを作成し,それを使って一人調 べをさせ,話し合いではワークシートや短冊シートに書いたものを基にして発言させる。 (資料3,資料4 P.29)
3 実践授業の計画
授業は,福島第二中学校の板口みどり教論に依頼して,1年1組30名を対象として行った。
教材は,「木琴」(金井 直)[光村図書]で行った。
4 授業の実際
授業の総時数を4時間とし,第1時は「木琴」 を読んだ感想を話し合い,今回の学習の仕方を手 引き等で理解する学習を進めた。第2時は,学習 の仕方にしたがって,「木琴」から読み取ったこ とをワークシートに書き込み,第3時は,「妹は どんな子だろう」を課題とし,ワ一クシートに一 人調べでさらに読み取ったことを書き加え,それ を基に話し合った。第4時は,「『私』は妹をど う思っているだろう」という課題で学習を進めた。
生徒各自に書き込んだワークシートを確認させ, 新たにつけ加えることは書き込ませた。Cの部分 を書き込むのは難しいようであったので,班ごと にさせ,Cの部分を互いに話し合った。
全体での話し合いでは,次のような発言などが見られた。
C1 「よ」というので,どうしようもなく 好きな気持ちがあると思う。「よ」ということばは,よく「恋人よ」などと使うから。
C2 「1連と5連は似ているけど,1連は悲しみを表していて,5連は「私の他に誰も知らないけれど」が付け加わっていて, 「私」と「妹」がつながっているというこ