福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -007/042page
えておいたのである。
この学校の研究では,子どもたちの好きなこと,やりたいことを進めさせ,子どもたちの意欲を喚超するとともに,主体的に行えるようにするための方法の一つとしてパソコンを活用したことが,「豊かな教育活動の推進」に結びついたのである。
子どもの願いをかなえるためのこのような教師の具体的な支援・援助が,子どもの学びをさらに豊かな学びへと発展させるのである。
2 今,求められている授業とは
(1)多様性に応える授業
ある小学絞の5年社会科の「公害の学習」での 話である。
公害の要因とその対策について,自分なりに調べたことをまとめる段階で,「これだけの資料ではどうしても納得がいかない。もっと調べたい。」という子どもが数名出てきた。
こうした場面では,教師が中心となり自分の知識などをもとに説明したり・補足したりして,いわゆる教え込みの形をとり,まとめてしまうことが多く見られるのではないだろうか。
しかし,この授業者は,子どもたちに他に調べたいことを聞き,「それではここに電話したら」と言って現地の教育委員会の電話番号と担当者名を書いたメモを手渡した。子どもたちは,それをもとに電話をかけ,自分なりの疑問を話し,担当者に説明をしてもらった。自分の疑問が解決した子どもたちは,生き生きとした表情で教学に戻ってきた。
そこで,授業者はすかさず自分たちの疑問と電話で解決 した内容をみんなの前で発表させ,それを生かして発展的 にまとめるように授業を進めた。
これは,この授業者がふだんから個々の考えを 大切にした授業を心がけていただけでなく,教材 研究を通して,こうした疑問をもつ子どもが出て くることをあらかじめ予想し,事前に関係者に連 絡をとり,協力を依頼しておいたために実現でき たのである。
ここには,子どもたちの多様な考え方や学び方に応じ,多くの資料を得て学習目標が達成できるようにしているなど,子どもの願いをかなえたいと考え続けて授業を組織している教師の姿がある。
(2)「豊かな授業」をめざして
情報化の進展など,子どもたちを取り巻く社会の変化は今後も急速に進むと考える。日々の授業を受け持つ教師にとっては,社会の変化に主体的に対応できる力,いわゆる生きて働くカを子どもたちに身に付けさせることが教師の大きな課題となってくる。
したがって,これからの授業は,「自分が納得するまで探求することができる」「自分なりの実感にそって考えが広められる」「自分らしく生きる力が育成される」というような,いわゆる『子どもたちが豊かに学べる授業』が強く求められる。
そこで,この「豊かな授業」をつくるために配慮したいことと,そのための方法としてコンピュータ利用の可能性を述べてみたい。
1.「その子なり」を大切に
新しい学力観に支えられた確かな学力を子ども 一人一人に身に付けさせるためには,教師自身が 先ず「子どもは本来,一人一人が有能であり,よ さや可能性を持っている」という児童・生徒観を 持たなければならない。さらに教師は,子ども自 身が自分のよさや可能性に気づいたり,他人のよ さを認め合ったりできるような子ども主体の授業 づくりを心がけたい。
もう少し具体的に,問題解決的学習を例に述べてみるが,キーワードは「その子なり」である。
・『その子なりに問題・課題をいかに発見できるか』
その子なりに感じたり,考えたりしたことを大切にして,自由に話し合ったりすることができることが大切である。
・『その子なりの方法で解決することにより,満