福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -010/042page

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後述の金透小学校の実践例のようにセンサーを用 いたコンピュータによる温度測定などは,測定を 自動化することにより,子どもを観察や記録に集 中させ,話し合いの時間を十分確保し,科学的な 見方や考え方を深めることができる。

2.体験的に学習する

 〇「表現(創作や発表)」で

 音楽科の学習で,楽器の演奏や作曲が苦手な子 どもが多い。その反面,「自分で演奏や作曲がで きたらなあ」と考えている子どもも案外多い。そ こで,後述の江川小学校の実践例のように手軽に 作曲・演奏ができる音楽用ソフトを活用し,「譜 面の1番はそのまま自動演奏させ,2番はアレン ジしてみよう」などという課題を与えれば,子ど もたちは,失敗を恐れることなく創作に取り組み, 音楽をもっと身近なもの,楽しいものと感じなが ら学べる。最近はテレビや映画の分野でもコンピュー タグラフィックスがふんだんに使われ,鮮やかな マルチメディアの世界が展開されている。このよ うなソフトを,後述の湯川中学校や福島商業高等 学校の実践例にあるように,美術,デザイン,設 計の授業において活用することにより,子どもた ちの表現活動や感性を豊かにするとともに,実社 会でも十分役立つ授業が行われつつある。

 また,ワ一プロソフトやマルチメディア型のオーサリングソフトを活用し,新聞,卒業文集・アルバムなどの作成などもかなり実践されている。

 以上のように,いわゆる「作品づくり」を通して,子ども自身が,文化づくりの担い手としての自覚や価値を見い出せる豊かな授業づくりが大切なのである。

 〇 「社会や自然との触れ合い」で

 様々な見学・観察学習は,体験学習の中でも子 どものものの見方や考え方を育てる上で重要であ り,子どもたちにとって大変楽しみな学習の1つ である。そこでは,写真を撮ったり,スケッチを したり,記録を残したり,時には録音やビデオ録 画など様々な活動が展開される。

 このような資料や記録をマルチメディア型のデ ータベースを活用してまとめておき,その後の学 習の資料として活用することは,自己学習の評価 ・深化に投立つ。また,後述の茂庭中学校の実践 例のように,植物,野鳥,水生生物などの検索型 ソフトや各種センサー(温度,光,音,pHなど) を用いて,自然の様子や変化を調べる環境学習に も今後活用場面が広がる。

3.コミュニケーション活動を行う

 パソコン通信は様々な情報を入手したり交換する手段として有効である。それと同時に,コミュニケーション手段としても今後多いに期待されるところである。

 都内のある高校で,英語の授業でインターネットを活用したところ,子どもたちの英語に対する興味・関心や意欲が驚くほど高まり,目を輝かせながら学習していたという。おそらく,子どもたち自身が,英語を学ぶ意味,外国人とコミュニケーションする楽しさを実感することができたからである。

 このように,子ども自らが学ぶことに対する価値を見い出し,主体的に取り組むことこそ豊かな学力の形成につながる。

 また,このようなパソコン通信の活用は,後述の葛尾中学校の実践例のように,単なる語学の学習に留まらず,異なる文化や人々の考え方にも触れ,多様なものの見方・考え方・さらには国際感覚を磨く学習の場を提供してくれるのである。

 これまで述べたように,一人一人が有能であるという児童・生徒観に支えられ,「その子なり」が貫かれた子ども主体の授業において,個に応じ多様な学習ツールとなるコンピュータを有効に活用し,子どものよさや可能性を引き出す授業こそ,新しい学力観に支えられた,めざすべき豊かな授業の創造につながるものと考えている。以下,今述べた各学校の実践例を紹介する。


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