福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -013/042page
「子どもの表現活動を支える多様なツールとしての活用」
下郷町立江川小学校
1 研究のねらい
自分の問題意識をもって取り組むことや.自分 の思いや考えを表現することに苦手意識をもつ子 どもが多い本校の実態から,平成6年度より,主 体的な学習態度や表現力を育てるためにコンピュ ータをどう利用すればよいかの研究を進めてきた。
2 研究の内容
○ 子どもの学習意欲を高め,表現活動を支え, 表現力を伸ばすためのコンピュータ利用の工夫
○ 実態や学習内容に即した自作ソフトの工夫
○ 市販ソフトの効果的な利用の工夫
○ コンピュータリテラシーの育成
3 研究の実際と成果
コンピュータを「自己表現の道具」や「問題解決の道具」とし,子どもの実態や学習内容を分析してその機能を生かした利用の仕方を工夫した。
(1)国語科 3年「犬がかわいかったよ」
主語と述語の関係を理解し,「何がどうする」 「何がどんなだ」「何が何だ」の3つの文型で文 を作る学習において,「何がどうする」の文型は 作文の中で多く使われることを考慮して,次のよ うなソフトを作成した。1枚目の画面にさまざま な生活の場面を白黒の絵で表し,主語となる絵を クリックすると,色彩や文字・音声などの機能を 生かして作成した画面にリンクする。このソフト を文を作る際のヒントとして子どもが必要に応じ て利用した結果,絵や音声などから主語の状態や 様子を想像し,主語と述語の関係をはっきりとら え,多くの生活場面から文を書くことができた。
(2)算数科1年「おおきなかず」
100までの数を正確に読むことと数の並び方に 着目することができるように,子どもの好きなチ ューリップ畑の数表のソフトを作った。空欄に適 当な数の花を植えて数表を完成させ,その数表の 一の位や十の位の数に着目して同じ数字の花を染 める活動を通 して,100ま での数を正確 に読み,数の 系列を理解す るとともに, 数の並び方の 規則性にも気 づき,自分な りの言葉で説 明することが できた。
(3)音楽科 −リズム打ちやふしづくりのために−
コンピュータに入力したリズムに合わせて正し くリズムを打ったり,記譜機能を使ってふしづく りをしたりした。教師の支援で活動することの多 い1年生や,音楽を苦手とする子どもたちが楽し く進んで学習に取り組んだ。友達同士協力して2 つの違うリズムを繰り返し練習した子ども,自分 の思いが表現できるまで記譜し直したりして,正 しくリズム打ちができるようになった子ども,自 分のイメージを曲にすることができた子どもと, 一人ひとりがとても満足することができた。
このように,コンピュータの機能を生かした利用の仕方を工夫したことで,今まで自信がなかったり,苦手意識をもっていた子どもたちが,自分らしい表現やよりよい表現にしようと主体的に取り組み,表現することの楽しさを味わうことができ,表現力を身につけることができた。