福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -016/042page
「体験的な活動を支援する知的ツールとしての活用」
福島市立茂庭中学校
1 研究のねらい
(1)新しい学力観と情報教育
情報活用能力の育成および新しい学力観に立っ た教育を推進していくためには,与えられた課題 や条件の中から一つの解答を見いだす「収束的な 思考」だけでなく,一つの事象の中から多様な考 えを導き出す「拡散的な思考」を支援するツール としてコンピュータを位置づけることが大切であ ると考える。そこで,本校では,コンピュータに おける「知的ツール」を次のように定義した。
生徒の多様な考え方を導き出すため,一つ の事象から問題を発見し,追究の仕方を創造 し,自分の考えを表現・発表するといった 拡散的な思考を支援する道具
(2)選択理科における「知的ツール」としてのコンピュータ活用のねらい
本校では,平成6年度より選択理科と必修理科との連携を図った環境モジュール学習を通して, 思いやりの心を育む環境教育を推進している。その中で「知的ツール」としてのコンピュータ活用のねらいを次のようにとらえ, 研究を進めてきた。
- 生徒一人ひとりの思考力を高め,深めるためのツールとして,能動的に活用させる。
- 生徒の自己表現力を高めるツールとして,主体的に活用させる。
- 生徒の主体的な課題研究や調査活動を支援するツールとして積極的に活用させる。
2 研究の内容 (□の記号は知的ツールの分類)
(1)題材名「茂庭地域における自然環境を探る」
(2)環境モジュール学習を支援するコンピュータ
機能と具体的な活用内容
□ 水環境モジュール :摺上川流域の水質調査
- 情報検索機能 ― 指標水生生物の検索 → C.
- 情報処理機能 ― 理化学的な水質調査データの表計算とグラフ化 → B.
- 計測機能 ― 照度センサーによる河川水の透視度計測 → C.
「照度センサーによる透視度を計測する生徒」
□ 大気循環モジュール :酸性雨・大気清浄度の観測
- 情報処理機能 ― 雨のpH観測データ,ウメノキゴケによる大気清浄度の表計算とグラフ化 → B.
- データベース機能 ― パソコン通信による気象衛星画像データベース化 → A.
□ 土壌環境モジュール :土壌における自然度測定
- 情報検索機能 ― 指標土壌動物の検索 → C.
- 情報処理機能 ― 夕ンポポ調査における自然率・土壌動物による自然度の表計算とグラフ化 → B.
3 研究の成果
自然環境の調査活動にともなう情報検索やセン サーによる計測,調査結果の情報処理・選択・伝 達等,知的ツールとしてのコンピュータ活用によ って,生徒が意欲的に探究活動を進め,拡散的な 思考力が深まり,生徒の自己表現力を高めること ができた。