福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -020/042page
「身体への直接攻撃」のいじめ解決に向けて指導援助した事例 1 はじめに
「身体への直接攻撃」のいじめは,自殺という 最悪の結末へといじめられる側を追いこむことも あり,緊急の解決を要する問題です。その対応は, (1)「被害者保護優先」という共通の基盤に立った 全職員による指導援助 (2)家庭との信頼関係を確 立しての指導援助 (3)児童生徒の心にせまる,本 質的な解決に向けての指導援助−であることが求 められます。今回は,いじめる生徒といじめられ る生徒の 《心を開かせ,心の声を聴く面接》 を核 として指導に取り組むとともに,全職員で迅速な 対応を行ったことが問題の解決に有効だった中学 1年生の事例です。なお,今回は,生徒とのかか わりを中心、に事例を紹介します。
2 いじめ事実の発見に向けて
〇 2学期半ば,担任はK男の表情がさえず,授業の開始時一人だけ遅れて教室に入ってくることが多くなったことに気づいた。
〇 K男の母親から,「衣服を汚して帰ってきたり,ため息をついたり,怒りっぽくなってきて心配だ」という内容の電話があった。
〇 K男がいじめられているのではと感じた担任は,K男の心を開こうと面接を試みた。
【K男との面接】 《担任》
《K男》
「最近,元気ないようだけど,どう?」 「・・・・別に・・・・」 「何か先生に話したいことがあるんじゃないかな」 「・・・・(沈黙)・・・・」 「今,気になっていること聴かせてほしいな」 「先生に言ったって・・・・」 「先生に言ったって?」 「・・・・(沈黙)・・・・」 「K男君の力になってあげたいんだけどな」 「・・おれ・・・・もういやで・・つらくて」 「う〜ん,つらい」 「B男たちに,殴られたり・・・・ 初めは,友達のふりして・・・・おれ,どうしたらいいんだかわかんなくて・・・・」 「そうだったのか,つらかったろう」 「(うつむいたまま)・・・・(沈黙)・・・・」 入学当初学級になじめずにいたK男は,支配的 なB男を中心とする集団(3人)に言葉巧みに引 き込まれ,使い走りをさせられるようになった。 その後夏休みを境に,金銭強要に始まり,掃除だ と言って便器を手で拭かされる,まわりを取り囲 まれ,殴られる蹴られる行為へと,いじめがエス カレートしていった。こうした中でK男は,B男 たちに対して反発する気持ちさえもなくなり,あ やつり人形のように言われるままにするしかなく なっていったことを苦しそうに話した。
3 指導援助の方針
深刻な問題であり,迅速な対応が不可欠である本事例について,次のような指導方針を立てた。
○ 指導態勢・・・対応について共通理解を図ったうえで「被害者保護優先」という基盤に立ち,全職員で指導にあたる。
○ 家庭に対して・・・事実を正しく伝え指導への