福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -022/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

【B男たちへのグループでの面接】

「かわいそう・・・・」

C「あいつ,目に涙ためてて・・・・」

「そ〜う,目に涙ためてた」 C「こんなことやっていいのかなって」
「う〜ん」 C「つらそうで・・・・」

B「もう,言うな!」

「B男君も同じ気持ちなんだね」 B「・・・・(沈黙)・・・・先生俺たちだってつらいんだ,みんなから冷たくされて・・・・」
「そ〜か。・・・・それは,つらいよね」 B「・・先生・・・・俺・・・・K男に,俺と同じつらい思いさせてたのかな?」

 このように,K男の心の痛みや苦しみに気づか せる面接を繰り返すにつれ,B男たちはK男の気 持ちを理解し,自分たちの行為を反省できるよう になった。それにつれ,グループはそれぞれが思 ったことを自由に話せる集団へと変化していった。

 一方,担任が,学級全体に対して「人間として の生き方」について考えさせる指導を行った。そ の結果,B男たちに話しかける生徒が現れ,B男 たちの表情はしだいに明るくなり,K男に対する いじめは見られなくなった。

5 まとめ

 本事例でいじめの解消に有効であった指導援助 として,次の4点があげられます。

○ 全職員にいじめの事実を報告し,その対応について共通理解を図った上で「K男の身の安全を守ることが優先する」ことを基盤にした指導援助を,全職員で行ったこと。

○ 保護者に対していじめの事実を正確に報告し,訴えには真剣に耳を傾けたことが,家庭との信頼関係を強めたこと。

○ 当事者の生徒に対して「あなたの話を私は真剣に聴くよ。あなたの話は,とても大切なんだよ」というメッセージを面接を通じて送りつづけたことが,生徒の心を開かせたこと。

○ グループでの面接を通して,支配―服従の関係にあったいじめ集団が,自分の思いを正直に話せる集団へと変化していったこと。

「身体への直接攻撃」のいじめに対する児童生徒への指導援助の留意点

 この型のいじめは,『子どもの生命・人間としての尊厳』にかかわる重大な問題であると受け止 め,「いじめは絶対に許さない」という毅然とした態度で,指導にあたることが大切である。

○ 子どもとふれあう機会を多くつくり,教師と子どもの信頼関係を築くこと。

○ 『被害者保護優先』という共通基盤に立ち,全職員がそれぞれの立場に応じた役割を自覚し,  一致協力態勢のもとで指導にあたること。

○ 日頃から培った保護者との信頼関係のもとに「親の立場に立ち,共感的に理解しようと努める  こと」によって,学校と家庭との連携をより深めていくこと。

○ いじめる側いじめられる側双方の心に焦点をあてて面接を進め,それぞれの不安・不満を軽減  するとともに,自分自身の行為や気持ちを見つめさせる工夫をすること。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。