福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -029/042page
(2)自然体験の量(調査2)
すべての項目で「何回も経験したことがある」 または「1,2度経験したことがある」が50%を 越えた。自然体験量は豊富であることが伺える。
また「何回も経験したことがある」について小 学校5年生と中学校2年生を比較してみると,両 学年にほとんど差がみられなかった。
自然体験は環境教育の基本であり,小学校で特に多くの経験をさせたい。また中学校においても自然とのふれあいから自然の豊かさを感じ取らせたい。その体験は,環境を保全する態度や行動にまで発展させることをねらいとする環境教育の原動力となるものと考える。
(3)環境保護に配慮した生活体験の量(調査3)
多くの児童・生徒が家庭や学校で環境に配慮した行動をしていることがわかる。このことは,中学生だけでなく小学生でも環境問題を考えた行動ができることを示している。
最も実行率の高い項目は「使っていない部屋の 電気を消す」が,78%と高い割合を示した。
しかし「遊んでいる時落ちていたゴミを拾う」「地域の清掃活動への参加」など,社会参加型の生活体験項目については実行率が低く,環境に配慮した行動が,他人のために生きて働くところまでは至っていないことを示している。道徳や特別活動などと関連づけて環境教育を行うことも必要である。
小学校5年生と中学校2年生との比較では,全 体的に中学校2年生の方が実行率が高く,中学校 2年生の方が環境保護に考慮した行動をとってい る様子が分る。
4 まとめ
調査結果から,環境教育によって身に付けたい 態度として次の3つの要素を考えた。
○ 自然にふれる
自然体験は感受性を高め,豊かな自然の価値を認め,守るべき自然を認識することである。自然の中で遊んだり,ふれ合ったりする体験活動を通して,自然の豊かさに感動し,その中から自然を大切にしようとする心がまえを育てたい。
○ 環境を考える
環境を保護するためには,自然や社会環境に興味を持ち,自然や人間の立場に立って,問題点や因果関係を明確にし,解決のための方法を考えることが必要とされる。この中に主体的な思考力や合理的な判断力,環境問題に関する知識・理解などが要求される。自然にふれ,自然をよく見て,考える筋道が明確になるように支援していきたい。
○ 環境を守る態度や行動力を身に付ける
環境教育では地球規模の環境保全まで見据えて日常生活ので主体的な実践力を身に付けさせたい。実践が伴って初めて環境教育は意義をもつ。
これらの3つの要素を考慮した,各校種に応じ た環境教育の取り取み方について次のように考え た。
(1)小学校 ・・・自然にふれることを通して,豊かな感受性を育成することを中心に
この時期には,自然にふれることを通して豊かな感受性を育てることを主にする。自然を体験させ,自然の中で遊ばせ,自然にふれる中で,守るべき自然がどのようなものであるかとらえさせる。
加藤陸奥雄氏(東北大学名誉教授)は「野外に出た時のカリキュラムは固定すべきではない。好奇心旺盛な子供達に自然を理解させるには,自由に活動させ,あまり目的をしぼらない方がよい。」と述べている。