福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -033/042page
により,読みの立場を示し,読みを深めるための話し合いに生かせるようにした。
ii. 「読みを磨き合わせる」段階
- 児童から出された三つの読みについてそれぞれの児童に根拠となっている言葉を明確にさせて理由を発表させ,話し合わせた。 それぞれの読みの理由としては次のようなものが出された。
- ア いきなり敵にぶつかり,なぐりつけた残雪の頭領としての勇気ある行動に感動したから。
- イ 救わねばならぬ仲間の姿があるだけだったという残雪の様子を見て,今撃つことは残雪に対してひきょうだと感じたから。
- ウ せっかくつかまえたおとりのガンを残雪が助けようとしているから。
- 読みの理由についての話し合いを行った後,それぞれの読みに対する意見を出させた。
ウの「大造じいさんのおとりのガンを助けるため」という読みに対しては,おとりのガンにそれはどの価値を感じてい ないという意見が出されたが,アの「感動した」という読みに対しては,賛成する児童も多く,取り立てて反対する意見 も出されなかった。そこで,「大造じいさんは残雪のどんな様子を見て撃つのを止めたのか」という発問をすることで, 戦いを見て感動する以前に撃つのを止めていることをとらえさせようとした。
しかし,残雪の目に救わねばならぬ仲間の姿があるだけだったという叙述から,イの「今撃つことはひきょうだ」とい う考えが大勢に認められはしたものの,感動したためという考えを変えない児童が 見られた。
3.検証授業【2】
(1) 題材名「大造じいさんとガン」(10/13)
(2) 本時のねらい
- 強く心をうたれて,ただの鳥に対しているような気がしなかった大造じいさんの心情を理解することができる。
(3) 学習過程
段階 学習活動・内容
時間 ○教師の支援 ●評価
仮説との関連
自分の読みを持つ 1.本時の課題をつかむ。 (1)物語の読みの視点を確認し,本時の学習場面をとらえる。
(2)本時の課題を提案する。
《残雪の頭領らしい態度に接した大造じいさんの気持ちを読み取ろう》
7 ○読みの視点 『情景を思い浮かべながら,残雪に対する気持ちの移り変わりを読み取ろう。』を確認し, 大造じいさんが残雪に相対する場面であることを確認する。 ○児童から課題の提案をさせ,話し合いの方向づけをする。
●学習課題をとらえることができたか。(観察)
読みを深める 2.強く心をうたれて,ただの鳥に対しているような気がしなかった,大造じいさんの気持ちについて話し合う。 (1)一人読みで持った個の読みを発表する。
(2)児童の発表から,読みの違いをとらえる。
(3)強く心をうたれた大造じいさんの気持ちについて話し合う。
(4)残雪のどんなところが,大造じいさんの心をうったのか,根拠とするところの違いをとらえ,話し合う。
《予想される児童のとらえた根拠》
- 戻ってきておとりのガンを助けたところ
- ぐっと長い首を持ち上げたところ
- じいさんを睨みつけたところ
- 手をのばしてもじたばたさわがなかったところ
28 ○一人読みのノートに教師の助言を事前に書き込んでおき,多くの児童が発言できるように促す。 ○児童にとらえやすいように意見を類別して板書する。
○児童の読みをまとめた板書の中に児童に氏名を書いた磁石をはり,誰がどの考えであるのか明確にする。
○一人読みに基づいて個の読みの根拠を発表させる。
●一人読みをした内容を進んで発表しようとしているか。(発表)
○それぞれの読みが大造じいさんの気持ちとして誤ったものではないのかをとらえさせる。
○大造じいさんの心をうった,根拠とする残雪の行動に違いがあることをとらえさせる。
○残雪のどんなところが,大造じいさんの心を一番強くうったのか考えさせる。
○事前に座席表にまとめておいた児童の一人読みをした結果を基にして,多様な意見が出るように指名する。(□1○1) ○読みの違いがわかるように児童の読みをまとめって構造的に板書するようにする。(□1○3)
○座席表にまとめた結果から挙手しない児童についても,励まし発言を促す。(□1○2)
○氏名を書いた磁石をはっていくことにより,各自の立場を明確にするとともに,話し合いを生かせるようにする。(□2○1)
○少数の児童の考えから順に読みの種類ごとに発言させていく。(□1○2)
○読みの根拠を一人読みの際にノートにまとめさせておく。(□2○2)
○読みの誤りをまとめ,正しく読み取れる事を確認する。(□2○4)
○他の読みに対する自分の考えを明確にさせる。(□2○2)
○根拠となった言葉がどれであるのかはっきりさせて考えを発言させる。(□2○3)
読みを見つめ直す 4.本時の学習のまとめをする。 (1)強く心うたれた大造じいさんの気持ちについて読み深まったことをノートにまとめる。
(2)大造じいさんの気持ちや情景を思い浮かべながら朗読する。
10 ○本時の学習により,読み深まったことをノートにまとめさせ,自分の読みの変容をとらえさせる。 ●話し合いにより深められた読みをノートにまとめることができたか。(ノート)
○読み深められた内容が表れるように工夫しながら朗読できるようにする。
○学習確かめカードにより,本時の学習を振り返り,自己評価する。
(4) 指導の結果
i. 「読みの違いを明確にする」段階
- 本時の課題「残雪の頭領らしい態度に接した大造じいさんの気持ちを読みとろう」に対しては,大きな読みの違いはみられなかった。 そして,根拠とする箇所の違いから読みの多少の違いはあるものの,残雪の行動に大造じいさんはますます感動を深めていくとまとめられるであろうと考えた。 実際に子ども達から出されてきた読みは主に次のようなものであった。