福島県教育センター所報ふくしま No.117(H08/1996.2) -035/042page
研修者研究報告
豊かな色彩表現力を身につけさせる工夫
−さまざまな彩色の体験を通して−
伊達郡霊山町立霊山中学校教諭 浅 野 豪
I 主題設定の理由
下記の調査結果は1年生に対して1学期に実施 したものであるが,生徒の絵画領域についての関 心は高く,描きたいという願望が比較的強いと思 われる(調査【a】)。しかし,線を主体とした表現 は得意であっても,その後の彩色となると苦手な 生徒の少なくないことが調査【b】から読み取れる。 制作の様子を見ていても,輪郭の中を単一の色で きれいに塗っていたりしていることが多い。つま り,彩色の仕方が画一的であることが調査【c】・【d】 から言える。したがって,色彩感覚や色彩表現の 質が高められていく基盤になる,さまざまな色彩 表現に関わる体験を積み上げていくことが,この 問題の解決になるのではないかと考えた。
【a】領域の中で何が好きか
絵画(29%)
工芸(33%)
鑑賞(9%)
デザイン(11%)
彫刻(18%)
【c】何を使って彩色したいか
水彩絵の具のみ(80%)
その他(20%)
【b】彩色することが好きか
好き(62%)
嫌い(38%)
【d】彩色の用具は
絵筆のみ(90%)
その他(10%)
具体的には,使える色を多くする手だてとして色を増やす体験的な学習が有効であり,画一的な有色の仕方を打破する手だてとして,いろいろな描画材料・用具による彩色の方法を理解させ,幅の広い彩色の仕方を習得する学習が効果的ではないかと考えた。
そして,体験的な学習で得たことを本格的な表現に結びつけていくことがとくに大切であり,体験的な学習の後,自分で工夫しながら彩色のできる段階的な手だてを取り入れることで,「一人一人の思いを生かした表現」を可能にしていきたいと考える。
以上のことから,混色練習やさまざまな彩色の方法を体験させ,一人一人の思いにふさわしい色や彩色方法を工夫させることで,個性的で豊かな色彩表現ができるようになるものと考え,本研究主題を設定した。
II 研究仮説
絵画表現において,使える色を増やすことやさまざまな彩色の仕方を体験させるとともに,一人一人の思いを生かせる題材を工夫すれば,色彩感覚や表現力が高まり,豊かな色彩表現ができるようになるであろう。
□「使える色を増やす」
- 混色練習や重色・にじみなどの方法で,いろいろな色や色の変化をつくり出すこと。
□「さまざまな彩色の仕方」
- いろいろな描画材料 (クレパス,コンテ,サインペン,インク)