福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.118(H08/1996.7) -001/042page
◇◇◇◇◇巻 頭 言◇◇◇◇◇
今 こ そ 、 一 人 一 人 の 英 知 を
福島県教育センター所長 水 野 信
国の生涯学習審議会が、「地域における生涯学習機会の充実方策について」の答申を提出したことが 先般報じられた。「内外教育」4月30日号に掲載された答申文によると、その一部に「地域社会に根ざ した小・中・高等学校」の生涯学習機能の充実という視点から検討が加えられ提言が取りまとめられて いる。その中で特に目に付いたところを要約してみると次のとおりである。
1 子供たちが、豊かな人間として成長していくには、知・徳・体のバランスのとれた成長が必要で あり、学校・家庭・地域社会での子供の生活全体を通して適切な教育が行われることが大切である。
2 子供たちは社会的な価値観の大きな変化や、様々な社会的風潮の影響を強く受けており、学校が 適切に教育活動を展開するためには、家庭、地域社会との密接な連携が不可欠である。
3 学校・家庭・地域社会の三者の連携・協力のためには、学校を社会に積極的に開いて、地域社会 の人々の理解を得るとともに、地域社会が持つ多様な教育力を生かすことが大切になる。同時に、 学校は地域社会の一員として積極的に地域社会に貢献していくことも大切である。
確かに子供たちの生活環境の変化は、身近な自然の減少、少子化、情報化、経済的豊かさ、生活の合 理化等に見られるところである。子供時代にこれらの状態をあまり経験しなかった私たち大人ゆえに、 これらを背景とする今の子供たちを十分に理解することが必要であろう。その理解を深めるために、例 えば、従来のPTAの活動をさらに発展させて、会員自身のためにという発想に立つ研修も考えられる。 ひいては、保護者と教師が学ぶ姿を見る子供たちに、自分の在り方の示唆を与えるかも知れない。
昨年度の全国高校PTA連合大会が、岡山市において一万一千名の関係者が集い開催され盛況を博し た。時代の推移に伴い、子供たちを取り巻く環境の変化にこれほど多くの関心が寄せられていることは 今の時代を象徴している。大会では、学校ばかりでなく家族までを巻き込んで、親子で一日一句川柳を 詠む光景や、子供たちと保護者が一体となって取り組んだ学校祭が契機となり、親子の対話が始まった ことなどが紹介されている。これらは、子供たちの健やかな成長を願う親と教師が真剣に語り合い、幾 多のハードルを乗り越えて得られた成果の一例と思える。「子供たちが、安心してそれぞれの目標に向 かって邁進できるような環境を整備することが、PTAの使命であることを再認識し、家庭教育の在り 方について指針を得ることができ、参加した意義が十分にあった」。これは参加者の感想である。
学校・家庭・地域社会が手を携えてこの環境を整えるために、できることから一つ一つ実践していく ことが各学校の抱える教育課題を解決する一歩と考える。その「一つ」とは何かを、それぞれの学校の 実情に応じて見いだすことが緊要であり、今こそ、教師一人一人の英知が待たれるところである。