福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -002/042page
特集 授業改善のための教員研修
自己の教育力を高める教員研修
子供の夢の実現と教師の自己実現のために郡山市立金透小学校長 川 田 昌 利
1 はじめに
平成4年9月、スペースシャトル”エンデバー”の190時間余搭乗し、地上の子供達に宇宙授業を行ったあの毛利衛氏は、次のように語っている。
「私が宇宙に興味を持つようになったのは、少年時代がちょうど米ソによる宇宙開発の端緒となるロケット期だった事もあるが、だれが興味をもたせてくれたかと言うと、 直接的には、小学校5,6年時の担任だった杉本先生と中学で理科クラブを担当した福屋先生だ。
石炭ストーブの煙突を芯にして、ボール紙で望遠鏡を作り、リヤカーに積んで校庭での星座研究。先生も一緒に見てくれた。その姿が、私たちに勉強の楽しさを教えてくれた。」(註1)もし、毛利少年が、小、中学生時代に優れた二人の教師と出会っていなかったら……。この一文は、教師の存在が、一人一人の児童生徒にとっていかに重いものであるかを語っており、私たち教職にある者の胸に、ずしりと響く。
ここに登場する二人の教師の何が、毛利少年を科学の世界に導く事になったのであろうか。”リヤカー式ボール紙望遠鏡による星座研究”の逸話からは、少なくとも次のような教師像が浮かび上がってくる。
まず第1は、子供達の学習を深め、科学する心を育てようという教師の意欲と情熱である。
大きなボール紙を煙突に巻きつけたり、リヤカーに固定したりしながら試作に悪戦苦闘している教師の姿が目に見えるようである。
第2は、専門的力量である。持ち合わせの素材を活用したり、その場の状況に応じてアレンジしたりできる融通性に富む専門的な能力が、しっかりと身についている教師だと言える。
第3は、温かい人柄である。児童生徒から信頼され、この先生とならいつも一緒に行動したいと慕われる人柄がにじみ出ている。
私達は、夫々自らの意志で教職の道を選んだ。どのような教師をめざして自らをどう高めていくか、それは勿論、教師としての各自の問題である。が、それは又同時に、私達の前にいる多くの子供達の限りない夢の実現と大きくかかわっているという事実を忘れてはなるまい。2 今、問われる教師の資質と研修
現在我が国がとっている教員養成制度は、いわゆるオープンシステムと呼ばれるものであり、これは、戦前の師範学校のように特別な機関で養成しようとするものではなく、大学では人間としての広い知性や教養を育む事を主眼とし、教員としての高い専門性は、教員となってからの研修(現職教育)によって高めていこうとするものである。
従って、教員は自らを高めるため、研修を行