福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -003/042page

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わなければならないとされているが、時代の変化著しい今日、教師自身の資質向上への努力はこれまで以上に重要なものとして、強く要請されていると言わなければならない。

 いじめ・登校拒否に悩む子供達や父母が目の前にいる。国際化や高度情報化の波は予想以上に速く、これまでの知識や価値観ではもはや対応しきれなくなってきている。 まして、10年先20年先の時代を生きぬいて行かなければならない児童生徒の指導に当たる教師が、一昔前に大学で学んだ知識・技能の切り売りで対応できる時代でなくなっている事は、今更言うまでもあるまい。

 この7月、第15期中央教育審議会の第1次答申がなされた。

「これからの子供達に必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し行動し、より良く問題を解決する資質や能力であり、 又、自らを律しつつ他とも協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性であると考えた。 これらの資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を”生きる力”と称する事とした。」  「教育は、子供達の”自分さがしの旅”を扶ける営みといえる。」という考えを基本に据えるものである。

 教育は今、国レベルで大きく動こうとしている。このような時のあって何よりも重要なのは、学校、特に教師の変革であり、新しい時代にふさわしい教育を具現するための教員の不断の努力であると言える。

 児童生徒に”生きる力”を求める教師には、当然自分自身の”生きる力”の充実が問われ、児童生徒の”自分さがしの旅”や”自己実現”を支援する教師には、教師としてのアイデンテティの確立が求められよう。

 次の表は、今年7月、郡山市内小中学校89校の校長先生方に、「新しい時代にふさわしいこれからの教員に求められる資質・能力」について自由記述していただいた結果の集計であるが、21世紀の教育を託すべき後輩への期待と熱き思いが伺われよう。

 (順位)
   1 使命感・情熱・教育愛等 
   2 児童生徒理解
   3 豊かな人間性(人間味) 
   4 実践的指導力
   5 自ら学ぶ姿勢(研修意欲)
   6 協調性(組織の一員意識)
   7 骨身を惜しまぬ姿勢
   8 幅広い知見(豊かな教養)
   9 社会常識
   10 創造性(創意工夫)
   11 情報処理能力
   12 心身のたくましさ
   13 豊かな感性
   14 専門的力量
   15 先見性(国際感覚)

3 自らの教育力を高める研修への出発

 自らの教育力を高める真の研修へと立ち向かわせるものは何か。それは、研修への渇望感や飢餓意識なのではないだろうか。

 島小学校での実践家でもあった武田常夫氏はこう述べている。

「わたしは時々猛烈な飢渇感におそわれた。文学や芸術について、歴史や社会科学について、その他あらゆる分野の知的な経験において、わたしは自分のそれが、絶望的に虚弱なものであることを意識した。

 わたしは、今までとは違った姿勢で、様々な書物や事物に衝突した。」(註2)

 このようにして、武田氏は更に意欲的に質の高い実践へと立ち向かって行ったのであろう。


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