福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -005/042page

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 時間的、予算的な面も含めて、新しい時代の研修にふさわしい対応が望まれる。

 (3)研修に打ち込む時間的、心理的ゆとりの確保

 教員には様々な校務が分掌され、日々の教育活動の指導に追われるあわただしさがつきまとう。学校運営全般を見直して、可能な限り精選して、研修に向かうエネルギーを生み出す努力をしていかなければならない。

5 教員研修の向上と校長・教頭の役割

 教員研修の成否は、これまで述べてきたように、本来、個々の教師の意欲や情熱に帰すべきものではあるが、学校の組織、中でも校長、教頭の意識や態度の如何によるところ、これまた大である。

 (1)方向性の明示

 かつては東京都庁の幹部職員でもあった作家の童門冬二氏は、リーダーのあるべき姿についてこう述べている。

「部下を率いるには、塔と道と橋が必要である。塔とは目標である。塔は高くなければならない。同時に美しくなければならない。皆が行きたがるものでなければならない。」(註4)

 校長は、夢と高い理想を掲げて、自校の進むべき道を示すと共に、真に価値あるものをめざそうという教職員の道標となる必要がある。

 (2)適切なアドバイスや援助

 子供のよさや可能性を生かすように、夫々の教員の個性や特性が一層発揮され、意欲的に研修に取り組めるよう、個々の教員に対し、あるいは学校の全体研究に対し、質の高い助言をしたり、物心両面で援助したりする事は、校長、教頭の大事な役目である。

 (3)研修しやすい環境の整備

 研修時間の確保、研修機会の拡充、教員のモラールを高める組織の確立、予算の確保等、研修しやすい環境の醸成に絶えず心がけなければならない。

 (4)校長、教頭自身の研修の充実

 私は、新たに校長になった方から、新任校長として今すぐ何をなすべきかをたずねられる事があるが、こう答えるようにしている。

「それは、あなたが今まで立派な教頭や指導主事であった事をすっかり忘れる事です。」

 優れた教頭がそのまま優れた校長たり得るものではなく、優秀な指導主事イコール優秀な校長ではない。校長は、校長となったその日から校長として必要な資質や専門性を高めるため、自己研鑽に立ち向かわなければならない。そして、そうした校長のもとにのみ、真に自分を高めようとする前向きな教師の集団が参集するものであろうと自戒する毎日である。

6 終わりに

 研修の成果が真に光を放つ時、そこには必ず研修者一人一人の強い自覚と内なる高まりが存在している。

 目の前の子供達の明日への夢を実現させるために、そして、教師としての自分をより自分らしく存在させ続けるために、夫々の力を高め、精一杯奮い立たせたいものである。


《註》 1.平成6年5月14日付 日本教育新聞「私の出会い」 2.「真の授業者をめざして」 国土社 3. 「学校管理講座3」 第1法規 4. 「情の管理、知の管理」 PHP文庫

〜《川田昌利先生のプロフィール》〜
 昭和12年 須賀川市に生まれる 県立安積高等学校 福島大学学芸学部卒業 昭和村立大芦小学校 福島大学教育学部附属小学校教諭などを経て、県教育庁義務教育課指導主事。いわき市立永戸小学校長、県教育庁義務教育課管理主事 同主幹 県教育庁いわき教育事務所長 平成4年4月1日 県教育庁義務教育課長 平成6年4月1日より郡山市立金透小学校長


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