福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -011/042page

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子どもの写真

今までの無計画的な思いつきの発問をしていた自分に気づき、”まだまだの自分”の自覚から研修意欲も喚起され、発問の目的や対象者、そして、発問の内容・表現・時期等も考慮して多角的、組織的に計画していくこと、主要な発問と補助的な発問の構想の仕方等について、どのようにすればよいかを学ぶことになるでしょう。また、視点を変えてみると,A男やB子の見せている姿は本人自身の問題なのか、あるいは教室内の人間関係や雰囲気がそうさせているのか等についても探ってみる必要があるでしょう。このような視点から見つめていくことにより、また新たな研修課題が生じてきます。

 「ノートの文字の乱雑さ、ノートづくりの未熟さ」が気がかりであった教師が、何とかしたいと思い、いろいろと実践しているうちに、子どもたちのノートづくりは勿論、自分の授業までも変わってきていることに気づいたと話していたことがありました。その教師によれば、ノートづくりのしやすい板書をあれこれ考え実践していくうちに,板書は教師自身のノートであることに気づき、板書内容は、教材研究の一分野であり指導計画の中にあらかじめセットされているべきものであること、また板書は、授業の中味を圧縮したエキスであるから、学習内容の相互関連が視覚的にとらえられるように工夫しなければならないことを学んだということです。そして結局,自分の板書一つを変えようとする試みから自分の授業全体までも変えることにつながったということです。

 教育の仕事は,究めれば究めるほど、またその先が見えてくるものです。また、一つの問題を解決すると、また別の新たな未解決の問題が生じてくるものです。こうしたことを解決して一歩一歩前進しようとする力の源泉は何かと言えば、それは、教育的情熱と”まだまだの自分の自覚”ではないかと思います。自分自身の未完成を自覚し、教育活動にエネルギーを燃やし続けていくことが、完成に近づくことになるのだと確信します。

 子どもを変える想いは、まさに自分自身を変えることでもあるととらえれば、私たちの進める研修は、まずは目の前の子どもの姿を自分自身の問題として受け止め、子どもの見せている現実の姿を、どのように変えていきたいのかをしっかりと見定めて、そこから自己研修の課題を見い出し、その解決に取り組む姿勢こそ、専門職にふさわしい研修であると考えます。

2 目の前の子どもたちのための研修

 私たち教師の研修は、基本的に自らが主体的に行うものです。

 教育公務員特例法に「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」とあります。これが法の規定として受け止めることが大前提ですが、研修を進めていく上で大切なことは、目の前の子どものために、自分はどう変わっていくことが必要なのかをしっかり見据え、そのことを自らの生き甲斐として意欲を持って自己研修に取り組む姿勢であると言えるのではないでしょうか。


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