福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -015/042page
話すと笑われるかもしれない」ということがあって発表できなくなる場合がある。
3つめは、技術的な要因である。声を出すという体験そのものが不足していたり、聞き手に効果的に伝える方法がわからなかったりして発表しようとする意欲をそいでしまうという場合である。
これらの要因は図3のように互いに深く結びついているものと考えられる。要因ごとに方法を工夫することも大切であるが、これらの3つのものを、まるごとカバーする学習方法を見つけることが効果的ではないだろうか。
3 体験やグループ活動を生かした授業の工夫
(1)共通体験を取り入れた授業の工夫国語の授業における同じ体験を土台にした話し合いでは、友達の話を聞いて、自分の話したい内容がはっきりしてくることが多い。相手の話している内容が理解しやすく、共感したり、批評したりしやすくなるからである。メモを取る活動などを組み合わせることで、考えを整理し、さらに深めることができる。
特別活動や生活科などの共通体験も生かしながら、児童の体験が新鮮なうちに積極的に授業に取り入れていきたい。
(2)小グループを利用した授業の工夫
大勢の前で話せなくとも、小さなグループなら話しやすいという体験は誰にでもある。
グループを作るときに、詩や短歌などに番号をつけておき、好きなもの1つを選んでカードに記入させ、同じ番号同士でグループを作る方法など、多様な分け方を工夫したいものである。
グループ内で順に発表しあい、まとめたものをグループごとに全体発表するなどといった活動につないでいくことにより、さらに、児童が主体的に話題や題材にかかわることができる。
人数は2〜3人一組を目安とし、多くても6人程度にまとめたい。
(3)ディベートを取り入れた授業の工夫
ディベートとは、ある一つの論題をめぐって相対する2つのチームの間で行われる論争である。一定のルールがあり、最後には何らかの形で勝敗などを判定する。小学校高学年の「聞く・話す」活動を設定した小単元でも取り上げることができる。
例えば、光村図書の小学校6年生の「クラス討論会」がある。(註2) 話題が「やらなければならないことが二つあるとき、楽しい方から先にやるか、いやな方を先に片づけるか」などといった「意見が分かれ議論の余地がある」ものになっており、チームで行うため参加への抵抗も少ない。また、議論を聞いている児童を、判定者として位置づけ、判定後に自分の考えをまとめさせたり発表させたりすることで、参加意識を高める工夫もできる。
4 おわりに
豊かな学力は、新しい学力観に立つ授業の充実によって育まれていく。言葉を媒介として、内容を理解し、自分の考えを形にし、他人に伝えるという力は、変化の激しい時代を生き抜くために必須のものである。
自分の考えや意見を積極的に発表し伝える能力を国語科の授業で育てていくことが、今強く望まれているのである。
(註2)光村図書国語6年下「希望」68ページ