福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -016/042page
連載コーナー
あなたもカウンセラー
〜児童生徒相互の好ましい人間関係づくりをめざして〜教育センター教育相談部
118号 互いに理解し合うことをめざした指導援助
119号 互いの信頼関係を深めることをめざした指導援助
120号 互いのよさを認めながら生かすことをめざした指導援助
◎ 声が、小さいんです!
9月末の秋晴れのある日、職員室の担任のもとへ、学級の生徒であるハルキとノゾミが困り顔でやってきました。
担 任:どうしたの?
ノゾミ:先生、今いいですか?
担 任:うん、大丈夫だよ。
二 人:……。
担 任:言いにくいこと?
ハルキ:………声が、小さいんです!
担 任:声が、小さい?
ノゾミ:私たちのクラスの合唱、全然声が出ないんです。
担 任:う〜ん。………でも、みんな張り切ってたみたいだけど。
ハルキ:そうです。でも……。
担 任:でも?
ハルキとノゾミは11月上旬に予定されている校内合唱祭の指導者とピアノ伴奏者です。 二人の話を詳しく聞くと、確かに曲もみんなで意見を出し合って決めたし、練習の計画も張り切って立てたとのことです。ところが、実際に歌ってみると声が小さいのだそうです。
担任は、1学期の途中から取り入れたゲーム(実習)によって、学級の雰囲気も活気づき、自分の考えをのびのび表現できる生徒が増えてきていると実感していました。 合唱も今のクラスなら大丈夫と考えていました。しかし………。
ハルキ: 安心して大きな声を出せないって言うんです。
担 任:………どうしてなのかな?
ノゾミ:自分だけ大きな声で歌っても、みんなが大きな声を出さなかったらはずかしいって。
担 任:そう思ってる人がいるんだね。
ノゾミ:ええ、カオルさんとか、タケシ君とか………。でも、みんなも少しは同じみたいです。
生徒相互の「信頼関係」は、担任が期待していたほど深まっていないようです。