福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -020/042page

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研究紹介

読んで理解したことを進んで表現に生かすための工夫

〜表現・理解の関連指導を通して〜

会津若松市立謹教小学校教諭  大久保 潤一

1 研究の趣旨

 児童の作文や日記を読むと、「〜は楽しかった(おもしろかった)」など直接的な表現が多く、心の変化や高まりのような内面的にかかわる表現があまり出てこない。それは、表現領域での学習内容が題材や取材、構成という点に中心が置かれ、優れた叙述や描写に焦点が当てられることが少ないからではないかと考える。しかし、実際には、児童は授業をはじめ多くの言語活動の中ですばらしい表現にたくさん出会っている。理解領域で扱う文学作品もそのひとつである。

 文学作品では、場面の情景や人物の心情などの叙述や描写は、直接的な言葉を用いなくても読み手に自然に伝わってくる。その優れた表現の仕方を学び,表現効果を味わい、自分の表現に取り入れていこうという姿勢が、表現力の向上につながるものと考える。表現は表現、理解は理解ではなく、関連的な学習の取り組みが必要であろう。

 そこで、本研究は読解指導において、単位時間内における表現・理解の関連指導の在り方を明らかにして、いつ、どこで、どんな方法で、どんな表現に、どのように着目させ、どのような形式で分章表現させていけば、より学習効果が上がるかという有機的な関連を重視した実践を行い、表現力・理解力に偏りのない指導の改善に役立てていこうと考え、本主題を設定した。

2 研究仮説

1 仮説


 文学作品の読み取りにおいて、表現の優れたところを味わい、その表現の仕方を参考にして文章に表す経験を積み重ねていけば、表現力が高まり、児童は進んで自らの表現を工夫するようになるであろう。


2 仮説のための論理

 (1) 「表現の優れたところ」とは
  場面の情景や人物の心情を表す表現の中で読み手が印象深く心に残ったり、感情や思いが自然に伝わったりする叙述のこと。

 (2)「表現の仕方を参考に」とは
  表現のよさやすばらしさを見い出し、どんなところを自分の表現として取り入れたいかを考え、生活の中での表現活動に生かすこと。

 (3)「文章に表す」とは
  作品の価値や本時のねらいに応じて、様々な表現活動をすることで、物語文では視写、聴写、書込み、吹き出し、日記、感想文など、説明文では要点、要旨、要約文などである。

  (4)「進んで表現を工夫する」とは
  生活場面で読み手を意識し、その対象に対して、分かりやすく必要な情報や自分の意志を正確に伝えること。


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