福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -029/042page
教研式知能検査偏差値は普通よりやや高い。
理科・数学が好きで得意としている。
友人関係は、小学校時代からの友人は数名いるが、保健室で会ったときにちょっと言葉を交わす程度である。2 家族に関する資料
家族構成は、両親、姉(大学生で別居)、兄(高校生)、本人で、母方の祖父も同敷地に居住。父親は冷静で合理的にものごとを判断するタイプである。母親は温厚であるが、過干渉の傾向が見られる。姉はA男と仲がよく、A男のことを心配している。兄はA男とあまり会話がない。幼い頃から学習や運動面で比較され、A男は兄に対して劣等感を抱いている。祖父は孫をかわいがっている。経済的には恵まれている。
3 考え方、生き方
ロボット関係の仕事に就きたいということで、工業系の学校への進学を希望している。
読書やゲームなどの自分だけの世界に閉じこもっていることが多い。しかし、「僕が一番悩んでいるのは、友達がいないことだよ。それは教室に行ってないから当たり前だけど」と、孤独な心のうちを語ったことがあった。5 問題の要因及び背景
A男は、小学校の頃から学習や運動面で姉や兄と同じ程度であってほしいと両親から期待されてきた。そして中学校になり、負けず嫌いな性格ゆえに、思うように成績を伸ばせないことに焦り、過剰な期待に圧迫を覚え、1年生の2学期からは頭痛を訴えて断続的に遅刻、早退、欠席をするようになった。同時に、教室の騒音は頭痛を引き起こし耐えられないということで、教室で過ごすことができなくなった。
このように、A男の頭痛を伴った不登校は、本人の性格、保護者の過剰な期待や中学校という新たな環境でのストレスから生じたものと考えられる。
6 指導援助の方針
保健室への登校は定着しつつある。保健室登校から教室へと一歩進めるため、校内の協力体制を得て養護教諭がA男の心身のケアにあたるとともに、A男の自立を支援するカウンセラー役となり、以下の指導援助の方針を立てた。
1 本人に対して
(1)カウンセリングを通して信頼関係を築く。(ラポールの形成)
(2)受容的な態度で接し、保健室を学校での「心の居場所」として開放する。
(3)A男自身に計画を立てさせ、学校生活のリズムの立て直しを支援する。2 家族に対して
(1)父親とは、A男の現在のつらい気持つを理解し、登校している頑張りを認め称賛してもらうなど、A男の自立を促すための父親としてのかかわりについて話し合う。
(2)母親はA男に干渉し過ぎの傾向が見られるので、世話を必要最低限なものに絞ってもらうなど、A男の自立を助けるための母親としてのかかわりについて話し合う。
(3)姉には今までどおりA男に優しく接してもらい、自分の体験などを通じてA男を励ましてもらう。