福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -030/042page
3 学級(学級担任)に対して
(1)共通理解を図り協力してかかわるため、学級担任にA男の保健室での様子や気持ちを伝える。(ただし、A男が秘密にしたい事柄については秘密を守る)
(2)学級担任との連携によってA男に学級への所属感を与える。4 学校として
(1)共通理解を得るために情報を提供する。(秘密を守ることについては前述の通り)
(2)家庭との連携を図るために、旧担任の協力を得る。
(3)教科担任、学年教師との協力体制をつくり、A男の学習意欲の喚起、学力の補充を行う。7 指導援助の経過
1 本人に対しての指導援助について
(1)本人とのラポール形成
「僕は集団生活が苦手で教室でうまくやっていくことができないので、保健室にいさせてほしい」と言うA男の気持ちを受容し、「保健室はあなたの本来の教室ではないけれども、あなたが教室へ行けるようになるまでの間、保健室という教室でできるだけ教室にいるのと同じようにやっていこう」と話した。4月当初は朝の挨拶の声もか細かったが、次第に元気な声で挨拶し保健室に登校するようになった。ただ、普段の会話の際には、A男は言葉で応えないでうなずいたり、首を横に振ったりして済ませてしまうことが多いため、A男にできるだけ発言の機会を与え、自信をもって大きな声で話すことができるように工夫した。
(2)「心の居場所」としての保健室の開放
6月までは、自分が興味のあることをやるように勧めた。ワープロ操作が巧みなA男は「なんでおれがこんなことを?」と言いながらも、養護教諭の仕事を手伝ってくれた。ワープロを使った手伝いを通して、養護教諭との会話も少しずつではあるが増えていった。左の絵はその頃ワープロで描いたものである。
7月に入ると、ワープロに飽きたA男は小説を読んで時間を過ごすようになった。
身体症状の軽くなりつつあるA男が保健室に登校し続けることが最良の策かどうかを生徒指導部会で話し合った。その結果、保健室ではなく相談室での自主学習を勧めることになり、養護教諭A男にそのことを伝えた。A男は「このまま保健室にいさせてほしい。相談室では学校の様子がわからないので家にいるのと同じだから、僕は登校しない〕と、現時点では保健室が学校での心の居場所であるという思いを述べた。A男には高校進学の希望もあるため、保健室での自主学習をすることを提案した。学習には遅れがあるため、自分が得意なものから取り組みやすい教材(塾や家庭学習の教材)を使って取りかかってよいことにした。A男は予定表を自分で作成した。このことにより、9月中旬には予定表の完全実施とまではいかないが、教科担任からの援助・協力を得て、自主学習を進めながら保健室で生活できるようになった。