福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.119(H08/1996.11) -031/042page
(3)規則正しい生活リズムをつくる
A男との話し合いで、自分の毎日の登下校時刻を記録することにした。さらに、登下校時には、担任または学年教師に挨拶し保健室の入退室許可をもらうことになっているため、A男自身の提案でその日の応対教師の名前も記入することにした。2 家族に対しての指導援助について
父親とは直接話す機会がなかったが、一度だけ電話で話すことができた。A男が部屋に閉じこもっていた頃に比べよい状態になっている事実を認めてもらい、それには父親の協力が大きかったこと、そして今後も温かい見守りが必要であることを伝えた。(母親の話では、父親は今までのかかわりの少なさを反省し、努めて言葉かけをしているとのことである)
母親には、電話や母親が来校した際の面談などを通して、母親自身の不安な気持ちに耳を傾け母親を支えるとともに、A男の自主性を育てるために、A男にとって不可欠な衣食住の世話はしても、その他は頼まれてから必要性を判断して対処するようにしてもらった。3 学級(学級担任)や学校として
学級担任は毎日養護教諭と連絡を取り、A男の保健室での様子や気持ちを知るように努めた。学級担任の姿勢に呼応し、学級の生徒たちも各種行事の前にはいつも熱心にA男を誘った。A男は応じることは少なかったものの、興味を寄せる様子をみせることもあった。旧担任は父親的なかかわりでスキンシップを図り、理科担当教師は実験準備の手伝いに誘い出した。また、全職員がいろいろな場面で言葉かけをした。8 成果と今後の課題
保健室ではあるが、A男が登校できていることは、A男の成長、発達の上で貴重である。
A男が自分で作成した予定表に沿った学校生活が少しずつできるようになったことは、無気力で何事も面倒くさいと言っていた時期から脱して、A男が自分の力で歩き始めた姿を示している。具体的には、2学期になって教室から級友が運んでくれる給食を食べられるようになったこと、1年の3学期から逃避していた定期テストを受けられるやようになったことなどに、A男の前進がうかがえる。
今後の課題は、A男が自立し集団生活へ参加できるようになることである。そのために、A男の気持ちを大切にしながら、本人が少しずつできることを共に探し、見つけた課題に挑戦できるようA男を支えていきたい。