福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.120(H09/1997.2) -014/042page
◇シリーズ
「豊かな学力」を育てるために
第3回 コミュニケーション能力を育てる英語授業
教育センター学習指導部
はじめに
第15期中央教育審議会は国際化が進む社会に対応し、相手の立場を尊重しつつ、自分の考えや意見を表現し、相互理解を深めていくこと、国際貢献に前向きに取り組むことの観点から、外国語教育について次のような答申をした。
中学校・高等学校においては、コミュニケーション能力の育成を更に重視する方向で改善を図っていく必要があること、また、小学校段階においては、国際理解教育の一環として、学校や地域の実態等に応じて、子供たちに外国語、とりわけ、英会話等にふれる機会や外国の生活文化等に慣れ親しむ機会を持たせることが適当であること、等々。
このことを踏まえて、生徒のコミュニケーション能力を高める視点について述べてみる。
1 英語圏内から英語圏外へ
かっての教科書の題材はイギリスやアメリカなど英語圏の国や都市等に集中していたが、現在、題材は世界のあらゆる国や地域に及んでいる。この傾向は今後ますます強まるであろう。
ちなみに中学3年のある教科書では英語圏外の10以上の国や都市が話題や題材となっている。お互いに国、民族、歴史、文化等が違う人々が理解し合う必要性が高まってきていることの表れである。また、題材は科学、文学、芸術等様々な分野にわたっている。地球温暖化、酸性雨、平和、人権等地球規模の問題も取り上げられている。こうした傾向は、中学校から高校へと進むにつれて、更に強くなっている。
このような題材や話題も扱いながら生徒のコミュニケーション能力の育成を図ることを考えると英語教育に携わる者として、英語自体は勿論のこと、地球上の出来事をこれまで以上に身近に捉える視点を持つことが必要とされる。
2 Mistake and Error
言語の習得に誤りはつきものであるが、誤りを恐れてCcommunicationの前で足踏みしている生徒は少なくない。誤りに対する視点、適切な指導が大切である。
Mistakeは不注意等による誤りで自分で矯正できるものであり、Errorはその域を越えており、指導による矯正が必要な誤りである。Mistakeの場合、教師主導で誤りを正してやることもあるが、生徒が自ら気づいて主体的に直していけるような指導を工夫したいものである。
次の会話を見てみたい。
ex.(現在形を用いたペアによる自由会話練習)
Kazuo:Ichiro p1ay(1) tennis on Sundays.
Emiko: Really? Then he plays tennis well, doesn't he?
Kazuo:Yes, he is(2).(2)の誤りについては、適切な場面、時期に矯正が必要であるが、(1)はMistakeであり、生徒が自ら気づいて、自分で誤りに対処する学び方を育てるような工夫をしたいものである。