福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.120(H09/1997.2) -023/042page
歌っていて、自分の音のくるいに気がつくかという問いに対しては、検証授業Bの終了後では、くるえばすぎにわかる、ほとんどくるわないと答える児童が半数以上となった。
5 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ
(1) 和音を合唱で表現することについて 児童の和声感を高め、美しい合唱を創りあげたいという願いをもって本研究を進めた。和音を分担して歌ったりすることは合唱の発声練習等で行われてはいるが、ここで意識したことは、活動が単なる訓練ではなく、和音の学習として目的を持ちながら、その曲を楽しく表現するための一つの方法として位置づけたことである。
児童は旋律を正しく歌うことを中心に歌唱してきたが、この活動を経験することによって音の重なりを意識して歌うことはできるようになったのではないかと思われる。
(2) 継続することについて
「ふしと低音」では旋律と根音、「ふしと和音」では旋律と和音を合唱する活動を取り入れ継続した。初めのうちは階名唱でも音程が不安定であったが、回数を重ねるうちに階名でなくても安定するようになり、強弱を付けるなど表現の工夫も見られるようになってきた。和声感が身に付き、歌うことに余裕が生まれてきたと解釈したい。しかし、この段階では力がようやく高まり始めたという程度である。音を重ねることに響きの美しさを感じて、今後も楽しみながら活動を継続することによって、より確かな和声感が身に付いていくものと思われる。
2今後の課題
(1) 美しい合唱を創りあげるために
美しい合唱ができるためには発声や発音など様々な要素が必要であり、それらが高まることによって美しさも高まることになる。 しかし、そのために特別な訓練をするのではなく、あくまでも曲を楽しみながら技能を高めていくような工夫をしていかなくてはならない。(2) 児童が主体的に音楽活動に取り組むために
これまでの合唱の学習では、どうしても教師から与えられた教材を、教師の指示通りに歌う授業になりがちで、児童の主体性を引き出しにくいものだったと思われる。児童が意欲を持ち、主体的に取り組むためには教材が魅力的でなくてはならない。今回は実態を考え何曲か用意し選択させたが、もっと魅力的で楽しめる曲を数多く用意し選択の場を広げておきたい。
グループ活動を取り入れることで、一斉に合唱するより一人一人の姿が見えやすくなったが、中にはリーダーの児童に頼ってしまい主体性に欠ける姿も見られた。めあての持たせ方等を工夫し、一人一人が進んで音楽に関わろうとする意欲と音楽に感動する心を大切にした学習のあり方を追求していきたい。