福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.120(H09/1997.2) -027/042page
2 理科に対する興味・関心の変容今回のSTS問題を扱った理科授業を通し、生徒達の理科に対する好き嫌いがどのようになったかを示したものが図1である。
図1からわかるように、理科の好き嫌いに対し「中問」と答える生徒の割合が減少し、「好き」と答える生徒の割合が増加している。また、「最も嫌い」と答える生徒がいなくなっている。「最も好き」、「好き」と答える生徒の割合が、約30%から50%以上に増加した。理由としては、生徒達が、授業後に、地球規模ばかりではなく、身近なSTS問題について数多くの例をあげることができるようになったことなどから、生徒達の日常生活と理科が密着し、そのことで理科に対する興味・関心が高まったものと考えられる。
さらに授業後の感想を分析したところ、生徒の日常の生活態度にも変化がみられた。これらをまとめたものが表4である。
(表4)生徒の感想にみられる日常の生活態度の変化 新聞を見る視点が変わった ……… 47名
新聞でつい理科の記事に目がいく……… 26名
図書館ではじめて本を借りた ……… 22名
親と新聞のことで話をした ……… 18名
ゴミが以前より気になる ……… 14名
本屋で科学雑誌を読んだ ……… 12名
クローズアップ現代を見た ……… 10名これらの生徒達の日常の生活態度の変化は、今後も継続される可能性がある。
今回の授業を通し、理科に対する興味・関心の高まりや生徒の日常の生活態度の変化がみられたことは、STS教材を用いた理科授業が、科学技術社会における健全な市民としての意志決定能力、問題解決能力を育む一つの方法になるのではないかと考えられる。
5 「新しい学力観」との関連
今回の理科授業は、他の生徒にわかりやすく伝えるため、発表内容で試行錯誤したり、発表方法で工夫したりなど、生徒達に主体的活動がかなりみられ、思考する場面も数多くあった。このようなことから、今回の理科授業は、「新しい学力観」でいう「自ら学ぶ意欲を高める」という点でも大変効果的な授業方法であったと思われる。4 今後の課題
(1) 今回は一つの単元での実践であったが、STS問題はすべての単元に含まれる。また、STS問題を扱った授業は教育効果が人きいと思われるので、今後、多くのSTS教材を開発する必要がある。
(2) 今回の授業では、タイトル点、内容点という具合にして、生徒間で相互に評価させた。しかし、改善点がかなりあり、個を生かす評価方法について検討する必要がある。
<文献>
小川正賢:「序説STS教育」(1993) 東津館出版