福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.120(H09/1997.2) -032/042page
研究紹介
教育相談の姿勢を生かした授業づくり
教育センター教育相談部 齋藤吉成
1はじめに
授業の主役は子どもである。しかし現実には、教師が自分の枠組みに子どもを集団としてはめ込み、一方的に知識や技能を注入しようとする傾向が強い。結果として、一人ひとりの存在は霞んでしまい、学びの意欲は失せてしまう。教師は子どもの内面に目を向けて一人ひとりに合ったかかわりを行い、それぞれの学びを保障していく必要がある。
いま、求められる学力(自己実現していく力)は、「学ぼうとする力」「学ぶ力」「学んで得た力」の三つから成り立ち、互いに働きかけあう。特に「学ぼうとする力」は、学習を進めていくうえで大切なエネルギーとなる。
本研究では、子ども一人ひとりの内面の動きに目を向け、『学ぼうとする力』を育んでいくために有効であると考えられる教育相談の姿勢を生かした授業づくりについて、二本松市立二本松第一中学校の渡辺健川員教諭の実践をもとにして探っていきたい。
2 研究の実際
本研究では、「教育相談の姿勢」を次のようにとらえた。
◎ 子どもの気持ちを理解しようとする姿勢
◎ 子どもの話をよく聴こうとする姿勢
◎ 教師自身が心を開こうとする姿勢
教師が授業の中でこうした姿勢に立ち、子ども一人ひとりの存在を意識してそれぞれの内面に目を向けながら具体的なかかわりをしていくことができるように、一人ひとりの『ネームプレート』を用いることにした。これを黒板へ貼ることで子どもの自己表出や社会的承認の欲求を満たし、一人ひとりが授業の中で満足感や成就感を味わって自分に自信を持ち、「自分は集団に役立っている、仲間から大切にされているという実感」(自己存在感)を抱くことができるような授業を進めようと考えた。
1 授業の実践
授業は、中学校2年生を対象に社会科の地理的分野から「日本の南西部」の単元で行った。
(1) 授業実践上の留意点
授業では、教師がネームプレートを用いる際に次の点に留意したいと考えた。
○ 生徒一人ひとりのよさの発見に努める、
〇 1単位時問の授業の中によさを生かす場と機会を意図的に設ける。
○ 単元を通して、偏りなく一人ひとりのよさを生かす場と機会を設ける。