福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.121(H09/1997.7) -001/042page
◇◇◇◇◇巻頭言◇◇◇◇◇
待つ『ゆとり』そして『生きるカ』を
教育センター所長 水野 信
第15期中央教育審議会による第1次答申の中で、これからの学校の目指す教育として、
a 「生きる力」の育成を基本とする。
b 生涯学習社会を見据えつつ、生涯学習の基礎的な資質の育成を重視する。
C 「ゆとり」のある教育環境で「ゆとり」のある教育活動を展開する。
d 教育内容を基礎・基本に絞り、その確実な習得に努めるとともに、個性を生かした教育を重視する。を含んで9項目をあげ、「真の学び舎」としての学校を実現していくために、学校の教育活動全体にっいて絶えず見直し、改善の努力をしていく必要があると述べられている。
ここでの「ゆとり」は、時間的な「ゆとり」を確保することはもちろんのこと、心の「ゆとり」や考える「ゆとり」であり、「生きる力」をはぐくんでいくためには、子供たちにも、学校にも、家庭や地域社会を含めた社会全体にも「ゆとり」が重要であるとしている。
「ゆとりと充実」ということは以前からも強調されてはきていたが、今回は、真にゆとりのある教育環境を整えるべく、十分に現状を認識した上で実効の上がる期待を教育に求めつつ提言されている。
「ゆとり」を生むための教育制度や教育課程の基準の改善にっいては、今後の各審議会の答申を待っことにしても、いずれ子供たちを前にして実際に「生きる力」を育成するのは教師の使命であって、各学校は、「ゆとり」のある教育活動を展開するための「ゆとり」のある教育環境づくりに努めなければなるまい。
これには、何よりも子供たちが学習内容を十分に理解できることが必要であり、これこそ教育活動の基盤であることは周知の事実である。分かる授業を展開するには、子供たちと教師との良好な人間関係から醸成される分かりたいとする学習意欲、分からせるための教材の構成、それに、分からせるための指導法が要求される。
先の答申でも、子供たちの発達段階に即し、ティーム・ティーチング、グループ学習、個別学習など指導方法の一層の改善を図りつつ、個に応じた指導の充実を図ること。また、自ら学び、自ら考える教育を行っていく上でも、問題解決的な学習や体験的な学習の一層の充実を図ることが明言されている。
子供たちにとっての時間的・心情的・思考上の「ゆとり」は、相乗的にその効果が表れてくるものと思われる。それには教師こそ、子供たちが思考する問を待っことのできる心の「ゆとり」を持てるようでなければならないと思う。更には、子供たちに「生きる力」をはぐくむことを踏まえた教育活動を展開していくために、教師自身にも自ら課題を解決し、自ら行動していけるように、当然に「生きる力」が備わっていることが期待されよう。