福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.124(H10/1998.7) -035/042page
A: 単元を通して同一番号を選んだ者 B: 授業後に選択番号を変更、事後も授業後と同じ番号を選んだ者 C: 事前と授業後とが同じ選択番号、事後に選択番号を変更した者 D: 事前、授業後、事後にそれぞれ異なる選択番号を選んだ者 事前も授業後も同一番号を選択した児童(タイプAとタイプC、計6人)のうちタイプAの児童は、話し合い活動により自分の考えを友達の考えと比較して強化し、タイプCの児童は、自分の考えを友達と比較検討したが、自分の考えを変更するまでには至らなかったと考えられる。
また、事前と授業後で異なる番号を選択した児童(タイプBとタイプD、計28人)は、話し合い活動により自分の考えを友達と比較し、構成し直して選択肢を変更した者で、素朴概念が変容した児童と考えられる。
授業後に正答に至った児童は、34名中19名(56%)であるが、事後では33名が、正答を選んでいる。このことは、「とける」という現象についての学習を単元の導入時に行ったため、その内容を表面的にしか理解していなかった児童は、溶解限度、質量の保存、物質の保存といった学習を進めるにつれて水溶液についての理解を深め、自分の考えをより正しい概念へ再構成したためと考えられる。
この表から、生活経験から形成された見方や考え方は、1単位時間の授業では正しい科学的概念に容易に修正されないものもあり、単元全体を通して系統的に指導していく必要があることがわかる。また、素朴概念の変容をこのようにまとめることにより、個々の変容の過程がよくわかり、個に応じた支援の手がかりになり、今後の指導の参考にすることができた。(2) 児童のかいた概念地図
図3 は、事後に児童がかいた概念地図の1つである。児童は、溶媒(水)と溶質(食塩、ホウ酸)との関係を溶媒の温度との結び付きでとらえている。それぞれの用語の関係付けができていると考えることができる。図3 児童のかいた概念地図
(3)児童のかいたイメ一ジ図
図4 は、事前、事後にある児童がかいた食塩水のイメージ図である。事前では、水溶液全体に色をぬったり、左図のように斜線を引いたりしたイメージ図をかく児童が多かったが、事後では、食塩水のイメージを図示しやすくするために記号を使用するなどの指示を与えたことにより、かなりの児童が右図のようなイメージ図をかけるようになった。食塩の粒を水の粒で包んだり、水の粒の上に重ねていることから、食塩の粒と水の粒を関連付けて食塩水を考えるようになってきたのがわかる。