福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.124(H10/1998.7) -036/042page
(4) 素朴概念の異なるグループ編成による話し合い活動に対する児童の評価
今回の話し合い活動が、授業に対する児童の意欲の喚起や思考活動の活発化に効果があったかを調べるため次の調査を行った。各項目の数値は、5段階評価で5、4、3を選んだ児童の全児童に対する割合である。どの項目もほぼ8割と高い値である。意欲を高め、思考活動を活発にするうえでこのようなグループ編成による話し合い活動は、効果があったといえる。
図5 素朴概念の異なるグループ編成による話し合い活動に対する児童の評価 5:とてもよくあてはまる 4:あてはまる 3:少しあてはまる
2:あまりあてはまらない 1:まったくあてはまらない考えの違う友達とグループをつくり、話し合いをしたことで 1 「なぜ、どうして」と思うことがあった。 85% 2 自分から進んで考えた。 82% 3 自分から進んで調べた。 85% 4 課題を解決すつ方法を自分なりにすじ道を立てて得た。 85% 5 結果を、予想や体験、今までの学習内容を関連付けて考えた。 76% 6 深く考えるようになった。 82% (5) 思考活動の変容
図5 は、事前、事後に行った思考活動の程度についての自己評価の結果を項目ごとに学級平均で表したものである。事前調査では、項目7「自分の考えをまとめたり、発表したりする」が他の項目と比べてかなり低かったが、事後調査では、項目7は伸長度が大きく、他項目と同程度の値になった。これは、今回の話し合い活動や、概念地図及びイメージ図をかく活動の効果によるものであり、思考活動を活発にするうえで、このような「話し合う」「かく」などの表現活動は、効果があったといえる。(6) 関心・意欲と思考活動との関係
事後テストの学級平均正答率は、88.3%とかなり高かった。素朴概念をもとにしたグループ編成による話し合い活動や、概念地図及びイメージ図をかく活動が児童の意欲を高め、思考活動を活発にし、それが高い正答率につながったと考えられる。III 実践のまとめ
(1) 意欲を高め思考活動を活発にするのに、素朴概念の異なる児童同士のグループ編成による話し合い活動は効果があった。
(2) 児童の思考を促すのに、概念地図やイメージ図をかく活動は効果があった。
(3) 児童は学習前に、事象に対して既に何らかの考えを素朴概念としてもっている。児童の素朴概念を把握し、それに応じた支援を行う必要がある。
本研究にあたっては、郡山市立富田小学校の大槻誠先生に授業実践、資料提供のご協力いただきました。【参考文献】
松森靖夫「子どもの多様な考えを活かして創る理科授業」 東洋館出版社