福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.125(H10/1998.11) -007/042page

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2 心が育つということ
 中央教育審議会の「幼児期からの心の教育の在り方について」の中間報告では、心が育つことに関して次のように述べています。

『子供たちが身に付けるべき「生きる力」の核となる豊かな人間性とは、
 1(丸囲み) 美しいものや自然に感動する心などの柔らかな感性
 2(丸囲み) 正義感や公正を重んじる心
 3(丸囲み) 生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観
 4(丸囲み) 他人を思いやる心や社会貢献の精神
 5(丸囲み) 自立心、自己抑制力、責任感
 6(丸囲み) 他者との共生や異質なものへの寛容
などである。
 このような感性や心が子供たちに確かに育まれるよう、我々大人が足元を見直し、改めるべきことは改め、様々な工夫と努力をしていこうではないか。』
 学校は、こうした感性や心を育む場でなければならないということになりますが、この答申では、さらに、学校が心を育てる場としてあり、続けるための6つの視点を示しています。
 1(丸囲み) 我が国の文化と伝統の価値について理解を深め、未来を拓く心を育てよう
 2(丸囲み) 道徳教育を見直し、よりよいものにしていこう−道徳の時間を有効に生かそう−
 3(丸囲み) カウンセリングを充実しよう
 4(丸囲み) 不登校にはゆとりを持って対応しよう
 5(丸囲み) 問題行動に毅然として対応しよう
 6(丸囲み) ゆとりある学校生活で子供たちの自己実現を図ろう
 ここでは、子供の心を育てる際に、幼稚園、小学校、中学校、それ以後というように心の育ちを系統的・発展的に捉え、一人一人の子供に教師が寄り添って豊かな心を育んでいくという視点の大切さを強調するとともに、道徳教育の核としての道徳の時間の指導を有効に生かしていくことの必要性、あるいは、不登校や問題行動・保健室の役割・カウンセリングの充実などの他、これまで道徳教育とは別領域と受け止められがちだった生徒指導や教育相談も含めて子供の心の育ちという観点から統一的に捉えて取り組まなければならないことの必要性についても述べられています。
 つまり、「心が育つ」ということは、子供一人一人に豊かな感性や人間性が育まれることであり、たとえぱ、その発達とともに、他人を思いやる心情などが豊かになっていくこと、規範意識や正義感などに関する判断力が高まっていくこと、生命を大切にしようとする意欲や社会に貢献しようとする態度などが向上していくことであり、人間としての生き方についての自覚が深まっていくことなのだと考えます。
 このように考えると、子供の心は、「学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育」によって育まれるということが改めて認識されるのではないでしょうか。

3 心が育つ学校であるために
 では、心が育つ学校としての役割をいっそう果たすために、学校は、その教育活動への取り組みをどのような視点から実践すればよいのでしょうか。まずはじめに、それら視点の前提とすべき基本的な考え方について述べてみます。それは、「心が育つ学校をつくる担い手としての『教師の心』の在り方」の問題です。「隗より始めよ」という中国の古い言葉は、日本語では「人にこうしろと言う前に、まず自分から始めなさい」という意味ですが、子供のことを言


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