福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.125(H10/1998.11) -011/042page
ど行けない」といった「不安の強い情緒混乱」に陥っています。
また、学校生活や進路の相談では、子供たちの「心の弱さや甘さ」が「心の荒廃」となって現象面にあらわれる相談事例も目立ちます。
これらの相談事例に共通するものは、「人間関係の希薄さ」であり、「実体験の少なさ」や「規範意識の低さ」などです。
来所相談に訪れる子供たちの心は、人間関係づくりにつまずき、「人間不信」に陥り、「過度の緊張」を感じています。「心を開く」ことができず、「疲労感」や「さびしさ」を感じながら、やり場のない気持ちに押しつぷされそうになっています。自分に向き合うことに強い不安を感じているようです。(2) 望まれる心へのかかわり
「人間関係がうまくつくれない」「心が疲れている」といった問題は、いくつかの要因が複雑に絡み合っており、その実像を明確にとらえることは困難です。速効性をねらう指導援助や厳しいだけの指導では、現象面は食い止められても真の解決とはならず、むしろ、ますます悪化の方向をたどるケースが多いようです。子供に目を向け、内面に迫りながち、心に触れるかかわりが教師に求められます。
子供があるがままの自分を受け入れ、自分の問題に気づき、それを課題として受け止めながら課題解決の方策を見いだしていくためには、子供の心を育てる、次のような教師のかかわりが必要であると考えます。
ア 見えない子供の気持ちをわかろうとする教師のかかわり
子供の話(気持ち)に耳を傾け、ありのままを牽理解しようとする受容的・共感的な教師のかかわりが、子供に安心感や信頼感をもたらし人間関係を深めていきます。
イ 子供の気持ちに寄り添う教師のかかわり
子供との好ましい人間関係に立ち、甘やかしや突き放しではなく、「叱り、教える」ことと「気持ちに寄り添う」ことの両面からかかわることが必要です。
ウ 子供の心に目を向けた教師のかかわり
子供が心を開き、自分を見つめ、心を耕していくためにも、教師自身が心を開き、子供の心に正対し、子供の気持ちを中心としたかかわりをもつことが必要です。3 子供へのかかわリの実際
相談事例から「心を育てる」かかわりについて述べてみます。
*事例I 小学2年生のA子は何をやるにも時間がかかり、まゆ毛や頭髪を引き抜いたり、計算問題や作文でつまづくと、自分の頭を拳で激しく叩いたりする。友だちと遊ぶこともなく、学校でも家庭でも一人で黙々と絵を描いている。 (1) 問題(背景)の理解
両親が共働きであるA子は、1才になったころから祖母に養育されました。祖母は躾に厳しく、失敗や甘えを許しませんでした。両親はA子が祖母に厳しく叱られるのを見るのが辛くて、「早くしなさい! なぜ上手にできないの!」というような接し方をしてきました。
小さいときからこのように養育されてきたA子は、「失敗することはいけないことだ」と思い込むようになりました。そして、上手にできない自分を責め、新しいことに取り組んだり、近所の友達と遊んだりすることを避けるように