福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.125(H10/1998.11) -027/042page
4(丸囲み) 事前、事後、把持テストの結果から… テストは共に、同程度で語彙の難易度に影響されないものを考慮し、問題1(1)〜(3)として登場人物の職業や会話がなされた背景などを問うもの、問題2としてパラグラフの抜けている部分を類推して日本語で書かせるものを出題した。
テストの正答率(%) 事前テスト 事後テスト 把持テスト 1(1) 37.1 86.1 88.2 1(2) 2.9 91.6 82.4 1(3) 11.4 80.5 61.8 2 2.9 30.5 29.4
テストを比較すると、すべての問いについて、事後・把持テストの正答率が事前テストより高い。生徒の読解過程において、推測、予測が正しくなされ、登場人物の背景などを考えながら読み取っていることがわかる。つまり、スキーマを利用した読解ができていると考えられる。IV 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ
本研究は、従来の文法を重視した訳読中心の指導からはスキーマの活性化は難しいと考え、ESL(English as a Secind Language)の指導をEFL(Eng1ish as a Foreign Language)の教室に応用し、実践してみた。その結果、
(1) Pre-reading活動を設け、生徒のスキーマを活性化させるように工夫することによって生徒の予測力が促進された。
(2) グループワークにより、内容に関して仮説を形成することができ、リーディング活動を受け身的なものでなく、積極的に読もうとする態度を育成する活動に変容させることができた。
(3) Task-Based Leaming(課題に基づく学習)により訳読を排除した読みの習慣ができ、生徒に仮説の確認、修正する機会を与えることができた。
2 今後の課題
(1) 読解過程はトッブ・ダウン処理とボトム・アップ処理の相互作用によるものと最近の研究では結論づけられているので、生徒の持つスキーマにより、仮説を立てて、ボトム・アップ処理によって、検証し、修正してさらに読み進める過程を今後の授業でも継続して実践する必要がある。
(2) 今回の研究では、Pre-reading活動の中で、スキーマを活性化すれぱ、内容理解が高まることは立証できたが、Pre-reading活動をさせることによって、Pre-readingがなくてもやっていける本当の読解力の向上が期待できるかは証明できなかった。この指導を長期にわたって続けることによって、読解力が向上するかどうかさらに研究を深める必要がある。