福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.126(H11/1999.2) -033/046page

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自作教材を活用した課題選択学習(中学校・理科・1年)

1 観察・実験の工夫
(1) 思考活動を活発にする工夫
 音の単元は、どの項目から学習しても理解できる内容なので、多様な展開が可能である。生徒指導の機能を生かして、生徒が問題意識に応じて課題を自ら選択できる学習を展開すれぱ、思考活動を活発にできると考えた。そこで、学習内容をいくつかの課題や実験にモジュール化して、生徒自身が授業時間ごとに課題と実験を選択できるようにした。また、多様化した生徒に応えるため、手軽に操作ができ、直感的に理解できる簡便な教材を開発した。

(2) 教材の開発
1(丸囲み) 簡易真空鈴装置
○ 音は真空中を伝わらないことを実験する装置。
○ 材料として、家庭用の真空密閉保存容器や電子ブザー、モーターを用いた。
○ 容器内の空気をぬくとゴム片が動かなくなり、プザーの音も聞こえなくなる。

簡易真空鈴装置

2(丸囲み) ボイススコープ
○ 音を水面の振動に変えて観察する装置。
○ 材料として、カップみそ汁の容器と水道ホース、ペットボトルを用いた。
○ ふたに少量の水をたらし洗剤を数滴加えて声を出すと、水面が振動する。音の大きさや高さを変えると、それに伴って振動が変化することを実感できる。

ボイススコープ

2実践
(1)課題の設定
 生徒は、ストロー笛などの簡単な実験を行い、それをもとに次の課題A〜Cを設定した。
  課題A 物によって音の出方や伝わり方は違うのだろうか。
 課題B 音の大きさや高さを変えると、振動の様子はどう違うのだろうか。
 課題C 音の進む速さ


(2) 課題を解決するための実験の選択
1(丸囲み) 生徒自身が、取り組む課題の順序を決めた。
2(丸囲み) 取り組む実験を次の中から選択して、学習計画を立てた。
  〈課題Aの実験〉
  A−1 音の伝わり方(音叉を水面につける)
  A−2 空気中を伝わる音(音叉の共鳴)
  A−3 物体を伝わる音(糸電話・バネ電話)
  A−4 水中のプザー
  A−5 真空中のブサー(簡易真空鈴装置※1(丸囲み))
 〈課題Bの実験〉
  B−1 ポイススコープで音の振動観察(※2(丸囲み))
  B−2 オシロスコープで音の波形観察
 〈課題Cの実験〉
  C−1 音の速さ


(3) 課題選択学習の展開
 生徒が3時限かけて行った学習について、課題を解決するための実験の選択例を次に示す。
A男 B夫 C子
第1時 A-2、A-5 C-1 B-1、B-2
第2時 B-1、B-2 B-2、A-3 A-1、A-2、A-3
第3時 C-1 A-4、A-5 A-4、A-5

3 成果
○ アンケートでは、「課題や実験を選択することで思考が高まった」「自作教材を使った実験を行い思考が高まった」と感じている生徒が多い。
○ 事前・事後調査やテスト成績によると、思考活動が活発になり、知識や理解も深まった。

課題や実験を選択できて思考が高まった
アンケート結果


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