福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.127(H11/1999.7) -037/042page
この結果から、90%以上の生徒が、それぞれの実習装置の活用に対して、回路計の操作に関する理解が深まり、操作技能を高めることに役立ったと評価している。また、実習の段階が進むごとに生徒の評価が高まっている。
これは、導通試験や電圧測定を実習し、そこで学んだ技術を用いて簡単な電気回路の点検、最後に複雑な回路の点検へと、細かなステップを踏むことで、回路計の操作技能も徐々に高まったと実感している結果と思われる。
図8 は、「実習装置の活用に対する生徒の評価」の平均と「事後テスト成績(20点満点)」との関係を示したものである。実習装置の活用に対する生徒の評価と事後テスト成績はともに高く、かなりの相関(相関係数O.58)がみられた。
これらのことから、操作技能を獲得する過程をスモールステップ化した4段階の実習装置の活用は、回路計の操作技能を段階的に高め、電気機器の点検に必要な知識を獲得するのに効果があった。(3) 生徒の感想
次は、それぞれの装置を活用した実習に対する生徒の感想の一部である。
1 導通試験練習装置を活用した実習の感想 ・ 線が見えなくても、テスト棒をあてればすぐ分かるのが感動した。 ・ 導通試験というものをしっかり理解できた。回路計の便利さを感じた。 2 電圧測定確認装置を活用した実習の感想 ・ いろいろな調べ方が分かってとてもよかった。 ・ 並列つなぎと直列つなぎでは、電球の明るさも違い、電球にかかる電圧が違うことが分かった。 3 故障発見装置を活用した実習の感想 ・ 予想をたてながら、どこが故障しているのかを調べたりするのが楽しかった。 ・ 様々な故障パターンを知ることができた。難しいものもあったが、考える力がついた。 4 アイロン故障発見装置を活用した実習の感想 ・ 回路計1つでいろいろなことができ便利なものと思った。自分の家にも欲しくなった。 ・ 自分で予想してみて、自分の考えを確かめるのが楽しく、発見できたときはうれしかった。 これらの感想からも、高い課題解決意欲を持ちながら楽しんで実習し、回路計の利便さを理解できたことが分かる。
III 成果
事象理解の段階を踏まえて、簡単なものから複雑なものへと技能を獲得する過程をスモールステップ化した実習装置を活用することは、課題解決意欲を高め、思考活動を促し、回路計の操作に関する知識や技術の獲得に効果があった。本研究にあたっては、いわき市立内郷第一中学校の四栗慎二先生に、授業実践、資料提供のご協力をいただきました。
【参考文献】
「技術科教育の研究」 朝倉書店
「中学校 思考力・判断力」 図書文化