福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.128(H11/1999.11) -012/042page
ってよいでしょう。
その各教科は何をしているのかというとですね、教科というのは目標がある。目標に沿って内容がある。みんなそういう構造になっています。そして、そこまで子どもを育てていく。そんなシステムになっています。各教科は、私の言葉でいうと「ここまで、早くこいこい。」という教え方をするんです。だから早くできればいいんです。「ここまでこいこいの授業」だと思うんです。早くできた子は立派。それは学校教育では大切なことです。それを学校教育がなくしたら学校がなくなる時だと思います。しかし、じゃあ「ここまでこいこいの教育」で、どの子にもやる気と自信を育てる学校はできるのか。それだげでもやる気と自信をつける子どもももちろんいます。早く分かる子はそれだけで元気が出ます。しかし、そうでない子が必ずいるはずです。各教科だけでは不可能だと思うんです。その時、私は、やはり「総合」という問題があるんだと思います。
なぜか、この総合的な学習の時間には目標も内容も書いてありません。時間とねらいは書いてありますが、それはそれぞれの学校でつくってくださいという趣旨ですから、それは目標というよりも、私に言わせれぱ総合的な学習の時間の「目当て」は各学校がつくらねぱならないものだと考えます。目当てを一人一人でつくる場合もあるでしょう。グルーブで作る場合もあるでしょう。学級で、学年で、あるいは学校でつくることも。こういうような目当てをつくってそれぞれの子どもがやる気と自信をつける、そういう学習活動を私は創りたいと思う。そこに私の願いを込めたい。私は、だから「総合的な学習の時間」に夢をかけるんです。一人でも「やる気と自信」のある子が増えるかもしれない。それが、私が考える総合的な学習が創設された理由です。
さて、先生方はどう考えますか。これから「総合的な学習の時間」の研究発表があちこちであると思います。先生方も参加することがあるでしょう。その時聞いてみれぱいいんです。「どこが違うんですか。」、「どこを観れぱいいんですか。」と。そして、具体的に考えてみれぱいいんです。
さて、時間になってしまいました。2つ目のどう取り組むかについては話ができなくなってしまいましたが、これで終わらせていただきます。
(いくつかの質問は、省略)
※ 平成11年9月10日、福島県教育センター「教育研究法講座」での講義を収録し、稿に起こしたものである。
- 注1
- 文部省パンフレット:平成11年4月付けで配付されたもの。「新しい学習指導要領で学校は 変わります。」というタイトルで、子どもたちの活動している写真や図表を多用し、多色 刷りで見やすい構成となっている。
- 注2
- 「学級崩域」についての中間報告:9月13日付けで文部省が発表した「学級経営をめぐる問題 の現状とその対応」のこと。学級崩壊の3割は指導力のある教師の学級でも発生していると 報じたこの調査により、学校教育の深刻な状況を改めて認識させられることとなった。
中野重人先生のプロフィール
昭和35年、鹿児島大学教育学部卒業 鹿児島県公立中学校教員として勤務の後 昭和44年、広島大学大学院教育研究科修了 昭和48年、宮崎大学助教授 昭和54年、文部省初等中等教育局教科調査官 平成3年、同視学官を経て、現在国立教育研究所 教科教育研究部長