福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.128(H11/1999.11) -017/042page

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こともわかってきました。直子もその中の一人でした。
学年や教科の先生からも、情報を得ました。

家庭科:直子は景子を避けていますね。
美術科:1学期は丁寧な作品づくりをしたのに、最近は色使いも暗いなあ。
学年や教科の先生からも、情報を得ました

こうした情報収集を通して、直子が景子を仲間外れにしようとしていたこと、景子のぐずぐずしているところを「ムカツク」と言って嫌がらせをしていたことがわかってきました。

〈大木先生の気付き〉

大木先生は、景子の周辺でいくつものシグナルが発信されていることを知りました。

大木先生の脳裏に、力なくうつむく、寂しげな景子の姿が浮かんできました。しかし、その場面に登場してくるのは直子でも他の生徒でもありません。大木先生自身でした。

1学期末に大木先生は、クラスのみんなの前で景子を厳しく叱りつけたことがありました。1度目は日直当番を忘れたとき、「しっかりやりなさい。自覚が足りない!」と。2度目は発表の場面でもじもじしていたとき、「もっとはっきりしなさい!」と。

あのとき、景子はどんな気持ちだったのだろう、その後の景子は……。

大木先生は景子の消極的な面のみを見て、その背景にある気持ちや状況をとらえようとしていなかった自分に気付くのでした。いたずらに景子のマイナス面のイメージを本人や周囲の生徒に植えつけ、いじめの芽を増幅させたのは担任の自分だったのかもしれない……。

3 いじめに対する初期の対応 〈景子へのかかわり〉

初め、景子は大木先生の朝のあいさつや声かけに戸惑った様子で、うなずくだけでしたが、5日目頃から小声ながらも返してくれるようになりました。その2日後、小さな声で景子の方からあいさつをしてきました。大木先生が満面に笑みを浮かべながら応えると、景子の顔も一瞬ほころんだように見えました。大木先生は、景子との距離が少しずつ縮まっているのを感じました。その日の昼休み、大木先生は、景子にさり気なく言葉をかけました。

先生:ちょっといいかな。
景子:ええ……。
先生:最近熱心に読書しているね。どんな本を読んでいるんだい。
景子:推理小説とかエッセーとか……。
先生:今度先生にも紹介してほしいな。

翌日、景子は2冊の本を持ってきました。
大木先生は、感想を書いたカードをそえて約束の日より2日早い土曜日に本を返しました。

月曜日、いつもより早めに登校してきた景子は、大木先生に1枚の紙を手渡しました。
この紙は、大木先生との面接に応じるというサインでした。

大木先生は、感想カードと一緒に手紙を入れておきました。そこには、景子の様子が気になっていたことや、景子の気持ちを考えずにみんなの前で叱りつけたことに対する先生自身の反省


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