福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.130(H12/2000.7) -007/042page
ようにも見えますがいかがでしょうか。
藤田 児童の実態把握となるとできるだけ科学的な見方でということで数量化とかを図ろうとする部分もあるのですが、まず教師としてのプロの目で子供を丸ごととらえようという部分が本当は大切なのですが、実はその個々の子供の実態把握がなされたという教師の思い込みが逆に柔軟性を欠いてしまって、この子はこういうものだという思い込みがあって、教師の考えを縛ってしまうという面がかなりあるのではないかと思うんです。ですから、そこのところを改善していかなければならないと思います。これまでの観察とか情報交換でとらえた実態を教師が授業の中で生かそうとするためにその実態に応じた手立てを講じたはずなのですが、実際は子供はもっと発想が豊かで変わっていくわけです。そうすると、その子供の変化に教師が対応しきれないという面があって、現実的に実態を生かしきれないという面があるのではないかと思います。ですから、教師自身の思い込みや既成概念などを捨てて柔軟な発想で子供に対応していくことが、子供の実態を生かしていくことになると思います。それと合わせて、学校が置かれた状況を生かすためには、その地域の中で成長してきた子供たちですから、子供たちに地域の中で学ばせ、地域の特性に触れさせる教育活動を展開することも児童の実態を生かすことにつながっていくと考えております。
藤田克孝先生 荒海 中学生の場合は、小学生以上に心身の変化が激しいわけですが、今お話のあったような傾向は中学校でもあるのではないかと思います。また、実態把握があまり機能していなかったというようなお話があったのですが、中学校の場合それを生かしきれるような時間的なゆとりがあまりなかったのではないかと思います。それから自由に対応できる部分が少なかったということも影響していると思われます。したがって実態把握を生かそうと考えていたとは思うんですが、そのようなことからできにくかった。ただ今回から各学校の自由度というものが非常に拡大されてきましたので、徐々に改善されてくるのではないかと思いますし、また期待したいと思います。本校でも生徒の実態調査を実施し、全国調査と比較分析してみましたところ、生徒は学校や教師が行っている具体的な指導に相応した実態を示しているということがあらためて確認されました。つまり、重点的に指導していることは高い値を示しました。したがって生徒たちが抱えている問題を的確に把握した上で、できるだけ具体的な手立てを講じてさらに生徒のよさを積極的に取り上げて伸ばしていくような場を保証したり、あるいはゆとりの中で生徒の目標や思いや願いにマンツーマンで対応できるようになっていってほしいと願っています。
渡辺 小・中学校が中心になると思いますが、児童生徒の実態は、数量化したり、客観的な調査結果から考慮したりする、静的で固定的な姿だけではないと考えます。私の経験に照らしてみますと、実態把握は、ともすれば教育課程編成の時期に集中して論議する傾向がありました。子供たちの変容を常に見取る、動的で可塑的なものとしてとらえないと毎日の教育活動に生かしきれないという反省をもっています。この点、藤田校長先生と同じ意見です。さらに、実態の中のよさをとらえ、どのように教育活動に生かしていくかとなると、教育活動そのもののねらいや特質、学習の形、支援のあるべき姿などを