福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.130(H12/2000.7) -008/042page

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十分に練り、把握しておく必要があると思います。子供たちの見せる実態を積極的に生かす場や時間、活動を総合的に判断して、積極的にコーディネイトする指導力がますます重要になってくるでしょう。また、学校のおかれた状況を考えると、学校の教育力の自己診断に着目する必要があります。学校は、子供たちの実態の調査や分析には熱心です。その反面、教育力の実態の分析は必ずしも十分ではなかったのではないかという反省があります。例えば、教員同士の研究歴、特技、得意分野など。さらには、地域の人材や教育素材などを総合的に見ると、どのような教育活動が可能なのかの展望です。学校教育にとって、自校の教育力の実態をよく理解することは、自校教育の創造にとって欠かすことのできないことだと考えます。子供たちの実態と学校の教育力の実態がバランスよく検討されるとき、自校ならではの教育の構想が具体性をもってくると思います。

金子  新しい学力観を通してという観点から申し上げますと、多面的な観察を通して個々の生徒の特性を把握し、伸ばしていくということになるんですが、高校の現場では新しい学力観が必ずしも定着しているとは言い難い。まだ、試行錯誤の中にあるということなんですね。進学校などでは教師主導の画一的な授業が教科によっては有効な働きをするという現実がある。また、生徒一人一人をどうとらえるかということについても、高校生の場合、青年期に達してることもあり難しいところがあると思います。最近の高校生を見ると、全般的に喜怒哀楽の表現が乏しくなってきている、抑制してきていると感じる場面があり、青年期特有のはつらつとした面が見えなくなってきていると感じています。そんなことで一人一人の実態をつかみきれないということがある。その点、過去の経験から高校でも家庭訪問をすることが大変有効な生徒理解の手段だと思います。家庭の中に入ることで、家庭の様子や雰囲気を知り、子供の内面をとらえられることが多いと思います。いずれにせよ、生徒の個性や特性を把握しないでは進路指導というものは考えられませんから、高校としても様々な工夫を凝らして実態把握に努めていると思います。進学指導について話をしてきましたが、就職指導を主にしている高校では、苦労しながら個性や適性の把握に努めていると思います。

司会  「子供たちの実態をよく把握してこそ個性を生かした教育活動もできる」ということの意味がかなり具体的にとらえられたと思いますが、学校の置かれた状況を生かすという観点を保護者の立場からどのようにご覧になりますか。

芳賀  子供たちの興味・関心、進路希望などを十分に把握した上で個別・グループ別などの様々な指導方法を採用していけるようになってくると思われますので、子供たちの実態を把握する方法をもう一度見直していただきたいと思います。というのは、昔は小・中学校に家庭訪問があって、家庭の様子を見ることによって子供の背景がある程度理解できたと思うのですが、今のカリキュラムでは先生方にゆとりがありませんのでその辺が削減されてきていると思われます。また、遠慮せずに電話などで情報を共有することで、子供たちの事故を未然に防いだりよい方向に導いてやることができるのではないかと思います。もう一つは、学校の置かれた歴史、地域性、文化といったものを考えますと、地域の人材を発掘して活用するということが特色をつくるという点では一番いいと思います。白河第一小学校を例にとりますと、PTA総会で呼びかけて「ふれあいボランティァバンク」というものを作ったそうです。これは、地域の方々やPTA会員が自分の特技や職業などによって登録をして活用していただこうという実践です。場合によっては、教員免許を持っている保護者の方に教科学習の上でお手伝いいただくような実践をされているそうです。また、学校


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