福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.130(H12/2000.7) -010/042page
また、生徒の立場からすれば、授業が充実すれば、疑問や興味・関心や意欲がわいてくるだろうと思われますので、まずは授業を出発点にしてそこから総合的な学習の時間や選択教科に結び付けていきたいと思っています。このように授業の延長上にあるものだという考えで進めるように私はとらえています。それから、総合的な学習の時間に限っては、地域の実態が必要なのだからできるだけ外に出て地域に何があって、何ができるのか、どういうことをしてもらえるのか、自分の目で確かめる必要があると思います。したがって、総合的な学習の時間が唯一のものではなく、関連をもたせて進めることが大切だと思います。
藤田 小学校の場合も同じことが言えると思います。新しいものが出てくると古いものがかすんでしまって、それだけが目玉のようなとらえ方をされるわけですが、それは違うと思います。特に小学校の場合、生活科が入ってきた時を考えますと、大変大々的に取り上げられましたが、その中身をみますと教科なのですがいま一つといった観がありました。生活科は教科ですが、総合的な学習の時間は教科ではない。したがって、生活科は活動そのものがめあてになるところがありますが、総合的な学習の時間の場合には内容についてねらいがあってそれに向けた活動をしていく。そういった点に違いがあるということを踏まえる必要があります。私は、小学校での総合的な学習の時間は下学年では教科発展型を中心に、上学年は課題追究型を中心に内容を構成していくことも必要だと思っています。そのような活動を通して、自立心の育成、共に学び共に生きる共生の確立、生活に生きて働く知の総合化として「既知をもとに未知を拓く基礎・基本」を獲得していけるようにできれば、と考えています。
先ほど芳賀さんが学校は授業が勝負でカリキュラムづくりが大切だとおっしゃっていましたが、総合的な学習の時間ではカリキュラムの創造といったことを視野に入れていかなければならないのではないかと思います。また、荒海先生のおっしゃったように、教科での基礎・基本の定着を図って、そこで獲得した基礎・基本を総合的な学習の時間で活用し、その活動に不足する部分を教科の中で補っていくというようなサイクル、更には学校行事の中で実践化していくような各教科、領域との関連を図った活動を主にしながらそれぞれの領域の担う役割と特性を生かすような運営、言い換えると、カリキュラム経営を学校経営の中心に置くという考えになることが大事だと思います。
司会 総合的な学習の時間をどうするかが「学校の特色づくり」に大きな力を発揮するであろうことは間違いないようです。しかし一方、お茶の水女子大学名誉教授の森隆夫先生は「教科が『主食』で総合…は『副食』」として、まず教科から、と言っておられますし、富山大学の山極隆教授は「総合的な学習の時間での学習活動は教科と他の学習要素及び教科と教科を関連付ける学習活動でありたい」と言っておられます。特色を求めるあまりイベント指向に終始してしまう危険性もあるように思われますが、そのあたりはどうなんでしょうか。
渡辺 私は、新しく加わった総合的な学習の時間だけを取り出して特色を論議することはこれからの教育の構想にプラスにならないと思います。と言いますのは、自校の特色ある教育は、教育課程全体の中で、検討・吟味することが基本であると考えているからです。それぞれの教育活動は、単独で成立することはまず考えられません。そこには、関連があって相乗的に効果がでてきたり、連動して活動することにより探究する道筋が深まったりすることは先生方は日常的に実感しておられることです。総合的な学習の時間と各教科、道徳、特別活動の相互関連を考えると、むしろ、各教科、道徳、特別活動でなければできないことがはっきりしてきたの