福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.130(H12/2000.7) -021/042page
まず、忙しい中来校してくれた労をねぎらいました。その後、田中先生は、高橋君を責める口調にならないように十分気を付けながら、気になっている学校での生活の様子を伝えました。
話を聞きながら、お母さんは、やっぱりそうだったのかという表情をしました。1年生になってかすかに期待していた子供の姿と現実が違うことを知り、がっかりしたからです。
高橋君は、小さい頃から落ち着きのない子供でした。また、衝動的なところがあって、けがをしたりガラスを割ったりということもたびたびあったそうです。
お母さんは、さらに家庭の事情についても話されました。
母親 「先生、父親が転勤になって単身赴任しているんです。私も仕事が忙しくてく叱って ばかりいて………。」 しばらく沈黙の時が過ぎました。
母親 「私に何ができるでしょうか。」 田中 「私も子供と遊ぶようになって思うのですが、ふれあう時間を少しでも持つと、子供 はうれしいようですね。」 お母さんは、小さい時に本を読んであげたことを思い出し、夜寝るときに添い寝をして本を読んだり、その日の話をしたりすることだったらできるかなと思われたそうです。
田中先生が高橋君をもっと理解しようとお母さんと懇談したことは、お母さんにとっても忙しい中で自分の子育てを振り返る機会となりました。
5 学級での指導 〜ほめる・教える〜
田中先生は、以前1年生を担任した時と比べて、子供の姿が変わったように感じていました。
自分のしたいことや話したいことしか頭になく、周りにいる友だちのことを気にしない子供が増えたようです。そして、自分のことを教師に話したい、分かってもらいたいという気持ちが強いように思えます。
田中先生は、「子供は認められたいんだ。その気持ちを受け止めながら、みんなで生活していることにも気付かせていくことが大切なのだ。」と考えました。
そこで、今までくどくどお説教をすることが多くなっていた自分の指導を反省し、「ほめること、教えること」をその基本としました。特に、今まで逸脱した行動ばかりに目が向いていた自分の見方を変えて、学校生活の約束を守って当たり前に行動している子供を積極的にほめることにしました。
「佐藤君の話をみんな最後まで聞いていたね。どう佐藤君、聞いてもらうとうれしいでしょう。」
「チャイムが終わるまでに席についていた人が多いよ。すぐ勉強始められるね。」
くり返し根気強く子供に教えていくことにより、「みんなでよくなっていくんだ」という意識を広めようと考えました。
また、いけない行いに対してはいけないことだと、その場で教えることにしました。その際、理由を明確に伝えることにより、何で注意されているかが分かるように気を付けました。
6 変化の兆し 〜つながる心〜
7月上旬、田中先生は、高橋君の逸脱する行