福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.130(H12/2000.7) -027/042page
研究紹介
直接体験から設定した課題追究学習を通して発表力を高める授業の工夫
〜身近な環境を活用した生物界のつながりの調査・観察を通して〜
郡山市立安積中学校教諭 杉原隆浩
I 主題設定の理由
本校では、環境教育として、『身近な環境問題から主体的に学ぶ総合的な学習の創造』の研究に取り組んでいるが、生徒自身が身近な環境を保全しようとする積極的な活動には至っていない。
理科でも、『環境教育に関心をもち、人間とのかかわりについて認識し、問題解決の能力と態度を育てる』ことを目標に取り組んでいるが、知識としての理解はしているものの、主体的に問題を解決しようとする態度を育てるまでには至っていないのが現状である。
そこで、自然環境に対する意識を探るためのアンケート調査を行ったところ、動物や植物との直接触れ合う体験が少なく、単に自然の動植物は危ないといった先入観が強い傾向にあり、他の生物との共存の大切さや環境保全の大切さを理解していても、実体験が伴っていないために、主体的な活動に結び付けることができないことがわかった。
また、生徒に学習方法の好み度を調査したところ、特に、発表に対する苦手意識が強いことがわかった。その原因として、実験結果や自分の考えに自信がなく、「まちがっていたらどうしよう」「質問されたらどうしよう」という不安があることがわかった。
そこで、身近な環境を活用し、実体験の伴った実験・観察を通して自然環境に親しみ、気付き、発見しながら、内発的な活動意欲を喚起すれば、自ら課題をみつけることができるのではないかと考えた。また、直接体験を通して得た個別課題であれば、主体的に実験・観察に取り組み、苦手意識の強い発表にも意欲的に取り組めるのではないかと考え、本主題を設定した。
II 研究仮説
1 仮説
生物界のつながりの学習において、次のような手立てをすれば、課題追究学習の結 果を充実した表現方法で発表できるであろう。 ○ 身近な環境を活用した野外調査や観察!などの直接体験を繰り返し行う。 ○ 直接体験から体得した気付き・新たな発見・疑問をもとに、自ら課題を設定する。 ○ 課題追究学習に取り組み、図や表・写真を活用したポスターを中心にして発表する。 2 仮説のための理論
(1) 『課題追究学習』とは
生徒が自ら課題を設定し、その解決方法についても主体的・能動的に取り組み、考えていく