福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.132(H13/2001.2) -002/042page
〈特別寄稿〉心もち
福島県中学校長会長
福島市立岳陽中学校長 神田 紀松川町の福島大学キャンパスに、馬術部の馬房(馬小屋)があり、5頭の馬匹(ばひつ)が飼育されている。永年馬と関わってきた関係上、時折馬術部の学生の指導に当たっている。
数年前、よく晴れた秋の日に、学生の乗馬練習に立ち合い指導する機会があった。このような時学生は、常々私によく懐いている19歳の牡馬を用意してくれる。人間でいえぱ80歳くらいの老馬であり、大人しい駿馬でもある。
学生から見れぱ、私もこの馬と同様に高齢と思ってか、それは極めて丁寧に接してくれる。しかも背丈の高い馬であったので、乗るには苦労するだろうと脚立を馬の足もとに置いて、そこから馬に乗ってくださいという。一人で馬に乗るぐらいのこと、私にも十分自信はあったが後輩の心遣いに水を注すのもと思い、手綱(たづな)を絞り馬に跨がろうとした。その時、2羽のヤマドリが甲高い声で鳴きながら、突然馬の目前を横ぎったのである。老馬は驚き、後足を強く蹴って、その弾みで立ち上がり、私は翻筋斗(もんどり)打って地面に叩きつけられてしまった。怪我を心配した学生達が駆けより、銘々声をかけてくれたが、幸い私の体に異常はなく、すぐに立ちあがることができた。
50年近く馬と接していて、このような経験をするのは初めてであったし、常々かわいがっていた馬でもあったのにと厳しい顔で馬に目をやると、馬の様子がどうもおかしい。
首を垂れ、肩を落とし、立ったまま体一つ動かさない。声をかけても反応すらなく、目を合わすこともしない。さも悲しそうな素振りさえうかがえる。「ずいぷんすまないことをしてしまった」という風である。静かに首筋をなぜながら「大丈夫だよ」と声をかけること数分、ようやく首をもち上げた。それでもすまないような、申し訳なさそうな素振りが体全体から伝わってくる。年老いた馬の思いやりの心に触れたようなさわやかな気分にさせられた。
馬は、生来大人しく憶病な動物で、ささいな物音や光、華美な色彩に敏感で、その対象から素早く逃避しようとする習性がある。また、馬それぞれに気性も癖も異なり、当然のことながら、頭がよく飲み込みの早い馬もあれぱ悪い馬もある。それぞれに個性の異なる馬を競技用の乗馬に育てあげるには、指導者の馬に対する深い愛情と、基礎・基本を繰り返し教える根気強さが必要である。まさに、鍛えあげなけれぱ良馬には育たないのである。
「日本人や日本杜会は、これまで、その時代の中で教育の営みを大切にし、その充実に力を注いできた。明治政府発足時、第二次世界大戦の終戦時など、幾度かの大きな教育改革が行われてきた。そして、日本の教育は、経済発展の原動力となるなど、時代の要請に応えるそれな