福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.132(H13/2001.2) -003/042page
りの成果を上げてきた。
しかし、いまや21世紀の入口に立つ私たちの現実を見るなら、目本の教育の荒廃は見過ごせないものがある。いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、凶悪な青少年犯罪の続発など教育をめぐる現状は深刻であり、このままでは社会が立ちゆかなくなる危機に瀕している。」
これは、昨年12月22日に提言として公表された教育改革国民会議報告の冒頭に「危機に瀕する日本の教育」と題し、教育改革の必要性を強調した一文である。この背景として、戦後50年におよぷ教育の在り方そのものが、社会の変化に対応できなくなったことを意味するものと思われる。
また、この報告で、ひときわ強調していることは、家庭教育の重要性である。教育を川の流れに例え、「最初の水源の清冽な一滴となり得るのは、家庭教育であり教育の原点は家庭である」と提言している。また、家庭は厳しいしつけの場であり、同時に、会話と笑いのある「心の庭」とし、さらに、親こそ人生最初の教師であることを自覚すべきであると結んでいる。
このことにまったく異論はないし、ぜひそうあってほしいと願うものである。
しかし、これまで我が国は、戦後長期にわたる平和と物質的な豊かさを享受してきたが、豊かな時代を築く過程において、当然地域杜会や家庭、学校を含めすべての人々が支えるべき教育そのものを軽んじてきた。
このことが、一部の子供とはいえ、自分の欲望を抑えきれない子や、現実を直視できずに虚構と空想の中に生きる子供たちを育ててしまったといえる。
これら、多くの教育に関する諸問題を解決するためには、何をどのように改革し実践していけぱよいのであろうか。今後の教育システムを改革し改善していくための具体的な方向性を行政と教育機関は当然であるが、地域社会と学校が強く連携し、その解決のために真剣に取り組むことが急務ではなかろうか。
人馬一体ということわざがある。年老いた馬が、自分の過失により人を落馬させてしまったと感じ、人を思いやる。動物もこれ。人と人の心もまた同じ。まして、教師と子供との心の絆は何をかいわんやである。時折、老馬の心もちをうれしく感じる昨今である。
神田紀先生のプロフィール 福島大学学芸学部卒業後、川俣町立福田中学校教諭、昭和41年 福島市立西信中学校教諭、昭和48年 福島市立福島第一中学校教諭、昭和56年 福島市立第四中学校教頭、昭和60年 義務教育課指導主事、昭和63年 川俣町立福田小学校長、平成2年 義務教育課指導主事、平成3年 義務教育課管理主事、平成5年 義務教育課主任管理主事、平成6年 義務教育課主幹、平成7年 県南教育事務所長、平成9年 県中教育事務所長、平成10年 福島市立岳陽中学校長、平成12年 福島県中学校長会長