福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.132(H13/2001.2) -016/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

りつめていた気持ちが解けたようでした。そして、これまでのことが蘇ってきました。

2 坂本先生と6年1組の子供たちの出会い

坂本先生は、50代前半のベテランの女性教師です。中心市街地のA小学校(児童数500名余り)に今年、赴任してきました。前任校では、保護者や管理職からの評価が高く、信頼されていました。そのようなことからもA小学校では、最高学年の6年の学年主任に任命されました。始業式の日、やる気満々の坂本先生と新しい担任に期待していた子供たちとの出会いがありました。学級(男子20名、女子18名 計38名)には、これまでにも担任の手をやかせてきたM男のグループ4人がいましたが、他の子供たちはいたって明るく素直そうでした。

坂本先生は、仕事熱心の上にまじめで、何事にも徹底して取り組む先生でした。坂本先生に担任してもらうと、クラスも引き締まり、学習訓練が徹底し、漢字や計算力が付くと言われていました。一方、坂本先生は授業中のささいな私語を嫌い、何事にもきちんと取り組む事を求め、子供たちに厳しく指導することが常でした。また、言葉遣いや忘れ物にも厳しく指導していました。これらの指導は、子供たちを押さえ過ぎると言われることもありました。

3 「荒れ」の兆しとかっかけ

5月はじめ、新学期の様々な行事も終わり、いよいよ授業に本腰を入れて行こうとしていた時に、坂本先生は、子供たちの変化に気付き始めたのです。

○ M男のグループと他の数名が、授業開始のチャイムが鳴っても、なかなか席につかない。

○ 家庭や音楽などの分科の授業を中心に、忘れ物が多くなっている。

○ 授業中の私語が多く、注意も効果がない。

このような状況から、坂本先生は最近大きな声で叱ることがほとんどでした。

前任校は、1学年1学級規模で25名余りの学級だったため、どの子にも目をかけることができ、行き届いた指導ができていました。

ところが、地域性も規模も違うA小学校に赴任してきた坂本先生は、自分が新しい環境に慣れるのに精一杯の毎日だったのです。

そんな矢先、5月中旬の算数の授業の時に、一つのできごとがありました。連れ立ってトイレに行ったM男のグループと体調が悪くトイレが近かった2名の子供たちを、理由も聞かずに叱ってしまいました。その上、全員を「最近のみんなは、がんばりが足りない。」と叱りました。

「おれたちの話なんか聞かないくせに。すぐ、おこるんだから。叱られてばかりでむかつくんだよ。」M男が隣の友達と交わしていたこの言葉は、今の子供たちの気持ちを表していました。この日を境に、坂本先生に反抗したり、無視したりする子供たちが出てきました。

子供たちは自由に楽しく学べることを求めていましたが、坂本先生は何事もきちんとしている学級を求めていました。このズレは日毎に坂本先生と子供たちとの間で大きくなってきたのでした。

4 坂本先生の気付き

坂本先生は校長先生の言葉から、2組の高橋先生の学級の様子を思い浮かべました。6年2組の子供たちは、時にはハメをはずすようなことがあっても、みんなが生き生きと生活していて、高学年らしい授業も展開されつつありました。高橋先生は、学年主任の坂本先生の話を真剣によく聞き、その後の指導に生かしていく先


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。