福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.132(H13/2001.2) -018/042page

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坂本先生は体育のサッカーの授業でM男のグループを2つに分け、M男たちにゴールマンなど各役割を持たせ、班別対抗のゲームを展開できるように工夫してみました。はじめ、抵抗していたM男たちも、いつしか夢中になってボールを追いかけていました。途中の休憩タイムでは、M男を中心に仲良く作戦を練る姿もありました。

担任に認めてもらいたいと思いながらも、素直にそれを表現できず反抗ばかりしていたM男たち。限られた仲間だけで群れていたM男たち。しかし、今日のM男たちは違っていました。

数日後、校庭で転んだ下級生に手をさし伸べるM男の姿を見つけた坂本先生は、このことを朝の会でみんなに紹介しました。その時の照れくさそうにしているM男の姿が印象的でした。

グループ日記も始めました。坂本先生からの言葉かけを楽しみに待っ子供たちが増えてきました。

6 戻ってきた子供たちの笑顔

坂本先生の回りには子供たちの笑顔がありました
6年1組ももうすぐ夏休みを迎えようとしていました。そして、教室の子供たちに少しずつ変化が表れてきていました。一人、二人、三人、と坂本先生の話を真剣に聞く子供たちの姿が増え、学級集団としてのまとまりも見えてきました。委員会活動やクラブ活動、清掃の時間も最高学年として一生懸命活動する子供たちの姿が見られるようになってきたのです。

長い夏休み中も、坂本先生は子供たちの休み中の生活の様子や保護者からの声などを載せた学級通信を発行し、便りとして届けていました。子供たちとの心のつながりを求める努力を続けてきたのです。2学期の始業式の日、坂本先生の回りには休み中の話を聞いてもらおうとする子供たちの日焼けした笑顔がありました。


《小学校高学年の学級崩壊の対応のために》
小学校の高学年の子供たちは、思春期への入り口に立っており、教師からの自立を求め、上から 押えつけられることに抵抗を感じ始めます。このような発達段階にある6年1組の子供たちは、坂 本先生の求めるスタイルに対応できず、息苦しさを感じ、フラストレーションを溜め、それが「荒 れ」として表出されたと考えられます。
「学級の荒れ」は、教師と子供の関係を見直すチャンスです。坂本先生は、校長先生の言葉や 隣の高橋先生の授業からこれまでの子供たちとのかかわりを振り返り、子供たちの実態をとらえ 直し、子供たちを理解することに努めます。そして、離れた心をつなぐために子供たち一人一人 が活躍できる授業づくり、信頼関係づくりに向けて見直しを進めています。
ベテランの教師自身が変わるということは、これまでの自分を否定するということではなく、 豊かな経験や実績から、現時点での自分と子供たちとのかかわりに生かせるものをとらえ直すと いうことでした。
一人で悩んでいた坂本先生が隣の学級の高橋先生と日ごろからの人間関係を生かし、つながり をさらに強くし、協力体制をとれたことが改善につながっていきました。このように身近な教師 間の協力を強め、互いに学び合う視点からの手だても大切と考えられます。


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