福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.132(H13/2001.2) -023/042page
研究紹介
国語科における「話す力」を育てる指導
〜教材提示の工夫を通して〜
教育センター長期研究員 泉田 淳
I 研究の趣旨
1 学習指導要領の改訂と音声言語教育
新学習指導要領の国語科では、「伝え合う力を高める」という文言が目標の中に新たに盛り込まれた。言語の教育としての立場を一層明確にし、互いの立場や考え方を尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点がおかれているということである。また、領域構成も言語活動を基にして改められ、3領域1事項になったが、その中の「A話すこと・聞くこと」については、研究が必ずしも十分であるとは言えず、児童の力が高まるような方法が工夫されてきているところである。
そこで、「話す力」を児童に身に付けさせるため、以下に述べるような仮説を設定し、本主題に迫ろうと考えた。
小学校第5学年国語科において、教材及びその提示方法を工夫することにより、児童の組立てを工夫して話す力を育てることができるであろう。 II 教材提示の工夫の視点
1 音声言語による提示
音声言語の教材として現在広く用いられているものは、教科書における文字言語教材である。
しかし、本来、「話すこと・聞くこと」の教材を文宇言語で提示することによって、児童は、文字言語で書き表された文章を文字言語として正確か、適切かを判断するようになってしまうと考えられる。
そこで、音声言語の教材は、可能な限り、音声言語のまま提示したいと考えた。
2 指導目標に迫るための提示
音声言語の授業において、児童に教材から気付いたことや疑問・問題点を出させて、その中から課題になるものを見付け出させようとすると、あまりに多方面に拡散してしまい、授業の焦点が定まらないことがある。これまでは、児童は何の学習をしたのか分からず当然話す力も身に付かない。
そこで、教材を工夫して提示することにより、児童が、その時間の目標に着目し、自ら解決しようとする、そんな教材提示の工夫はないかと考えた。
3 繰り返し、選んで聞くことができる教材、相互評価や教師の評価につながる教材、残って使える扱材
音声言語は、口から発した瞬間に消えて無くなってしまうという特徴がある。児童が話したスピーチや話などを教材として提示しようとしたとき、この特殊性のために困難を生じることがある。また、相互評価をするにも、基本的には一度聞いただけで判断するよりほかにない。繰り返し聞く順番を選んだり、改めて選び出したものを聞き比べたりすることが、児童にも簡単にできるようにしたいと考えた。