福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -002/036page

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特集 「地域とともに子供たちの生きる力を育成しよう!」

筑波大学名誉教授 山口 満   地域の特色と教育力を生かした
  教育課程の編成と展開
筑波大学名誉教授
山 口  満

 

はじめに

 去る6月8日,大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校において,一人の乱入者のために,多くの子供と教師が殺傷されるという痛ましい事件が起きた。我が国におけるこれまでの学校教育の歴史においても例をみない,あまりにもむごく,悲惨な出来事である。二度とこうしたことを起こしてはならない。犠牲者の御冥福と順調な回復を心からお祈りする次第である。

 この事件に関して,遠山文部科学大臣は,「日ごろから目を配って,社会全体で子供たちを守ってほしい」という趣旨の緊急アピールを教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)を通じて出している。地域ぐるみで子供を見守り,育て,学校の安全管理に協力するということの必要性が改めてアピールされているわけである。

 そうしたことを含めて,学校教育と地域社会との関わりの在り方を,教育課程の編成とその展開に当たって,地域の特色と教育力をどのように生かせばよいのかという問題を中心にして考えてみることが,この小論の課題である。
この課題を次のような相互に関連した3つの問題に分けて,順次考察する。

 第一は,教育課程の編成や展開に当たって,地域の実態や特色を踏まえ,その教育力を生かすということの具体的な中身は何かという問題である。今回の学習指導要領の改訂を手がかりにして,地域に根ざす教育課程の編成を進める上でのこの課題や問題の所在について考える。

 第二は,地域に根ざした総合的な学習をどのように構想し,展開すればよいかという問題である。学習活動の内容ということだけではなく,地域の人々や諸施設・諸機関との協力・連携の在り方も,重要な問題である。

 第三は,学校における教育活動に対する地域住民の理解や協力をどのようにして得ることができるのか,さらに,学校評議員制の導入などによる学校運営への地域住民の参画をどのように進めればよいかという問題である。

 全体を通して,21世紀前半の時期におけるあるべき学校像を,学校と地域の関係の在り方を再考するということを通して明らかにし,各学校が重点的に取り組むべき課題の所在と解決の方向性について示唆を得ることとしたい。

1.地域の特色と教育力を生かした教育課程の編成と展開

 周知のように,新しい学習指導要領は,完全学校週5日制の実施と時期を同じくして,


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