福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -005/036page
一つの側面であることは明らかであるが,もう一つ,学校における子供の学びの質の転換を図るというねらいによるものであることを指摘しておきたい。学校における教育活動の中心である授業における学習の意味の主体化の実現を図るということが目指されているということである。
IEA(国際到達度評価学会)による学力の国際比較研究の成果などにあらわれているように,我が国の子供たちの学力の実態には,知識やスキルでは高いスコアを示すことができるが,学び方,考え方,応用の仕方,学ぶ意欲や意味の実感などの点では世界の諸国の中でも最低の位置にあるという問題状況がみられることが指摘されている。教室での授業では,結果としての知識を教え込むというパターンが支配的になってしまっているという事情があることが,その背景になっている。
端的に言って,受験シフトの中での知識の伝達中心の授業が学習における子供の主体性を押しつぶしている,とみることができる。授業や学習活動における地域の意味を見直すという発想は,そうした今日の学校教育における授業と学習に対する痛切な反省から出ているものであり,地域を素材にした学習活動を重視することによって,子供の側における学ぶことの意味の主体化の実現を図ろうとするものである。このことを,平成8年7月に出された第15期中央教育審議会の答申では,「〔生きる力〕の育成を基本とし,知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から,子供たちが,自ら学び,自ら考える教育への転換を目指す」と述べられている。
このように地域に注目することが授業における子供の学びの質を変えることにつながるという期待は,(1)地域の自然,人々,文化遺産,伝統,生活様式などが学習のための素材,つまり教育資源としてきわめて有効にはたらくこと,そして優れた効果を発揮すること,(2)そのためには,教師の側での適切な準備や指導が不可欠であることという二つのことが前提になっている。
そうした前提を充足することができる地域教材の取り上げ方や指導法が具体的な単元の内容や指導場面に即して工夫され,実践されなければならない。
2.地域に根ざした総合的な学習の構想と展開
先にも指摘したように,今回の学習指導要領の改訂によって,「総合的な学習の時間」が小,中,高校に共通した学習活動のための「時間」枠として創設された。完全学校週5日制の実施に伴い,教科等に充てる授業時数の大幅な縮減が図られた。その一方で,総合的な学習を行うための「時間」については,小学校で週当たり約3時間,中学校で2〜約3.7時間,高校で3年間に105〜210単位時間という多くの授業時間数が充てられている。
そうしたことからみても,この新しい「時間」への期待が如何に大きいものであるかということを知ることができる。この「時間」を使った総合的な学習が期待通りの成果を収めるこ